喧嘩もセックスも「アレ」で通じちゃうベテラン夫婦がラブラブでいる秘訣とは? 横山真由美『つまり、アレ。』

アニメ・マンガ

2019/3/9

『つまり、アレ。』(横山真由美/小学館)

 最初はどれだけラブラブでお互いのことを想いあっていても、気がつけば次第に気が抜けてくるもの。前まではきちんと「好き」だと伝えてくれていた恋人が、最近はなかなか言葉にしてくれない…なんて不満を抱えているひともいるのでは。

 横山真由美氏の漫画『つまり、アレ。』(小学館)では、そんな長年連れ添ったがゆえに言葉を必要としなくなったベテラン夫婦・ナツミ(28)とツトム(28)の日常が描かれている。

 相手に水やティッシュを取ってほしいときは「アレ取って」。
頼んだ用事をしてくれたか確認するときも「この前のアレだけど」。
晩御飯に何を食べたいか聞いても返事は「この前のアレ」。

 なんでもかんでも「アレ」で言葉を省略してしまう彼らは、しかしそれで通じているからすごい。相手の考えていることが手に取るようにわかるからこそ、夫婦はいちいち言葉を尽くすようなことはしない。いわゆるツーカーの仲である。

 しかし、この作品では、そんな「アレ」で通じる関係性に嫌気がさした妻のナツミが怒りを爆発させるところから始まる。大学時代からの付き合いで全てが丁寧だった頃もある。それがいまやなんでも「アレ」で済ませることに「マトモな会話してなくない?」と気づいてしまうのだ。共働きで休日に一緒に部屋の掃除をしていたり、仲の良さは感じられるが、それでも彼女は「お互いどうでもいい存在なの!?」と泣き出してしまう。

 そんな彼女に「“アレ”で通じるのはその瞬間を共有してて同じ認識を持ってるからだろ?」となだめるツトム。たしかに、お互いにしか通じない「アレ」を持っているというのは、それだけ心が通じあっている証拠でもある。

 2人の喧嘩はおさまるが、ナツミの「できるだけはしょらないで丁寧に話そ」という一言から、“アレ”はNGワードという夫婦の新たなルールができる。

 と言いつつも、ルールはそれほど厳格ではない。「セックスしたい」は「アレでいいんじゃない?」というナツミの提案にツトムが意地悪でダメだという2人の姿は、単なるラブラブな夫婦である。長年連れ添ったツーカー夫婦といえば、もっと殺伐としていたり、冷めきっている印象があるが、この2人はちょっと違う。年齢がまだ若いというのもあるが、お互いに仲睦まじくいるための工夫をしているように感じるのだ。

 お互いにパンツを交換してドキドキしながら外出したり、南国旅行に行きたいというナツミの願望を叶えるためにツトムが部屋をリゾート風にプチリフォームしたり、2人で海水浴に行くために一緒に脱毛をしに行ったり、挨拶代わりにお尻を揉んでスキンシップをとったり…つくづく、良好な関係というのは協力して作っていくものなのだな、と身につまされる。

 飲み会で酔っ払って帰った日の連れ帰り方などは、この作品には長く連れ添っているからこその慣れた手際。夫婦だからこその楽しさに溢れている。

 ツーカーの仲になりながらも、丁寧なコミュニケーションを図るために新たなルールを設けたり、そういう自分たちの関係性を尊んでみたり、結婚生活のマンネリ打破の方法としても参考になるエピソードばかり。

 最近パートナーとのコミュニケーションに不満がある方にもおすすめしたい1冊。

文=園田菜々