ツンデレ女勇者と平和主義の魔王による、破天荒ラブコメ!『勇者は使命を忘れてる』が面白い件

アニメ・マンガ

2019/3/12

『勇者は使命を忘れてる』(ホンノシオリ/白泉社)

 ファンタジーモノにおける勇者と魔王との関係性には、フォーマットがある。世界を救うために立ち上がった勇者を“善”とするならば、人類の脅威となる魔王は“悪”だ。そして、勇者は仲間とともに魔王を打ち倒し、平和を取り戻す。これがいわゆる王道のストーリー展開。けれど、そんなフォーマットを覆す、異色のファンタジーマンガが登場し、話題を集めている。それが「マンガPark」にて300万PVを記録した、『勇者は使命を忘れてる』(ホンノシオリ/白泉社)だ。

 本作のメインキャラクターとなるのは女勇者・ヒズミと魔王・ヌエのふたり。女神の選定を受けて勇者となったヒズミは、幼い頃から剣術と魔法の訓練に明け暮れ、魔王を倒すことのみを使命として生きてきた。そして、いざ、剣を交えんとした瞬間、魔王が口にしたのは「話し合おう」という一言だった。そう、本作に登場する魔王は争いを好まず、人類に危害を加えることもなく、自然を愛でながら暮らすことを望む平和主義者だったのだ。

 勇者vs.魔王の対立構造が崩れたところから、物語はおかしな方向へと加速していく。魔王の発言に耳を傾けないヒズミは、毎日のように城にやって来て、勝負を挑む。けれど、圧倒的な力の前に為す術もなく、返り討ちにあってしまう。それでもヒズミは諦めない。毎日魔王の前に姿を現しては、なんだかんだとイチャモンをつけ、刃を向けるのだ。

 そして、読者はここで気づく。あれ? ヒズミって……ツンデレヒロイン?

 タイトルにもある通り、ヒズミは「魔王を倒す」という使命を忘れてしまう。その代わりに彼女のなかに芽生えるのが、魔王への恋心なのだ。バトルモノと見せかけての、ラブコメ。その不意打ちにやられた瞬間、読者は作品の世界観に魅了されるだろう。

 前述のように、ヒズミはツンデレ属性が強い。魔王に対し、「そうやって何人もの女を泣かせてきたのね」「あんまり見つめられると…照れるわよ…」「私が寝てる間に何かしたでしょう」などと、想定外のセリフを連発する。

 それを受けた魔王の反応も愛らしい。猪突猛進型のヒミズにうんざりしたり、ツッコミを入れたり、傍から見れば振り回されっぱなしなのだ。

 そんなふたりがどうなるのかというと、単行本のラストで「まさか」のハッピーエンド(?)を迎える。ヒズミと魔王よ、お幸せに。そう願わずにはいられないだろう。

文=五十嵐 大