楽したい、めんどくさい、タダがいい…ネガティブで意識低い戦略がヒット商品を生む!

ビジネス

2019/3/13

『ちょいバカ戦略 意識低い系マーケティングのすすめ』(小口覺/新潮社)

 新しい商品や技術が登場し、「今度はきっとこれが流行るぞ!」とメディアが騒いだにもかかわらず、それがまったくの期待外れに終わることはよくある。3Dテレビやセグウェイ、おサイフケータイ…。このあたりのものは、名前を聞くだけで“懐かしい”と感じる人が多いだろう。一方で、iPhoneをはじめとするスマホのように、当初は「そこまで流行らないのでは」と考えられていた商品が、今や私たちの生活になくてはならないような存在として普及していたりする。この差は、いったいどこで生まれるのだろうか。

 本書『ちょいバカ戦略 意識低い系マーケティングのすすめ』(小口覺/新潮社)は、“意識の高低”に注目しながら、こうしたマーケティングの事例を読み解いていく。本書でいう“意識の低さ”は、人間がもつネガティブな欲求――「楽をしたい、めんどくさい、お金を払いたくない、誰かに自慢したい」などを指している。そして、本書で著者が注目する“意識低い系”は、そうした“意識低い”とされる価値観や視点を意識的に持てる人のことだ。著者は、この“意識低い系”によるマーケティングこそが、製品やサービスのヒットの鍵になると語る。

■iPhoneが売れたのは革新的センスがあるから…ではない!

 Appleは、誰もが認める世界的な成功企業だ。その主力商品であるiPhoneは、どうしてここまで爆発的に普及したのだろうか? 一般的にAppleの成功要因は、創業者のスティーブ・ジョブズの意識の高さ――美意識、こだわり、完璧主義といった面で語られやすい。

 だが、著者はその反対である“意識の低さ”にポイントがあると指摘する。Appleは、マッキントッシュ(今のMac)でマウスやタッチパッドを使うスタイルを導入し、iPodで直感的に操作できるホイールを採用してきた企業だ。つまり、彼らは「わかる人にわかればいい」というスタンスで意識の高い製品を作るのではなく、むしろ、だれもが楽をして使える「便利さ、わかりやすさ」を追求してきたのだといえる。

 この解説は、自分の母親を想像すれば非常に説得力がありわかりやすい。母がiPhoneを使い始めた理由は、それがカッコいいからでも、高機能だからでもない。みんなが使っていて、しかも操作がわかりやすいからだ。たぶん、彼女はクラウドが何たるかを説明することはできないが、iPhoneをきちんと使いこなしている。

 本書はこの“意識低い系”に着目し、さまざまな事例を解説していく。LINE、ズボラ家電、ワークマン、いきなり!ステーキ…。こうした近年のヒットの背景には、私たちの根源的な“意識の低い”欲望が見え隠れする。専門家たちに期待されながらも、あえなく日の目を見なかった製品たちは、もしかしたら意識が高すぎたのかもしれない。さて、今もてはやされているAIやIoT、QRコード決済――これらは、本当に私たちの生活を変えるのだろうか。

文=中川凌