ノルマを課すリーダーは時代遅れ!? メンバーが自ら動く仕組みはこう作る

ビジネス

公開日:2019/3/20

『ノルマは逆効果 なぜ、あの組織のメンバーは自ら動けるのか』(藤田勝利/太田出版)

 4月から後輩を持つ、あるいはチームリーダーや中間管理職になる、という人もいるだろう。そしてあまたある「リーダーシップ論」の本から、何を選ぼうかと迷っているのではないだろうか。そんな方の選択肢のひとつとして、ぜひ、加えていただきたいのが、『ノルマは逆効果 なぜ、あの組織のメンバーは自ら動けるのか』(藤田勝利/太田出版)だ。

 著者の藤田勝利氏は、クレアモント大学院大学のP.F.ドラッカー経営大学院(ドラッカー・スクール)でMBA取得後、現在は、コンサルタントとして次世代のビジネスリーダー育成に力を入れた活動を展開中。そんな藤田氏の著書だけに、本書には藤田氏自身の考えに加えて、ドラッカーの教えなどもちりばめられている。

 その内容だが、まずタイトルにもあるように「ノルマ」は、チーム、組織にとって「逆効果ですよ」という教えが中心軸になっている。

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 では、著書のいうノルマとは何かというと、その定義はこうだ。

「本人の意思から離れ、他者から与えられた、本人が主体的に同意していない業績目標値」

 本書では、これをノルマと定義する。つまり「はい、あなたの今月の売り上げ目標、100万円ね」と、なんら根拠の説明もなく一方的に渡されたら、それはノルマなのだ。

 今あえて「目標」という言葉を使ったが、本書によれば、目標とノルマは意味が違うという。ノルマがいわば訳も分からずに機械的に与えられるのに対して、「目標」とは、「なぜその数字を達成する必要があるのか」ということの理由・根拠が説明され、それに対して与えられた人が「よし、それなら納得、一肌脱ぐぜ」と、モチベーションを持って臨める対象なのである。

 つまりノルマとは、人材を機械的にとらえた組織論の発想であり、一方で目標は、人材を「成長したいという意思を持つ人間・個人」として、しっかりととらえた組織論からのものというわけだ。

 このように本書は、現在の多くの日本企業に蔓延している「根拠なきノルマ(数字)という幻想」(数字・結果至上主義)ばかりをがむしゃらに追う組織、管理職者、リーダーの間違いを指摘した内容だ。

 具体的には「ノルマに追われた組織がどうなるのか」「ノルマのない会社に共通する習慣」「ノルマに頼らずに結果を出す『マネジメント』の原則」「これからの時代に成長する組織と人のカタチ」などが、実際の企業や人物の例を交えつつ、わかりやすく解説されている。

 では、部下を持つ立場の人は、どんなリーダー像を目指せばいいのか。本書の「ノルマのない会社に共通する習慣」の中から、望まれるリーダー像を紹介していこう。

●部下と上司は「上下」ではなく、「横」と「前後」の関係が大切

 目標こそあれども、ノルマなどに頼らない会社のリーダーは、部下と上司の関係を「上下関係」だなどとは考えない。「横」か「前後」の関係ととらえるという。

「横」の関係とは、「相談しやすい」「話を聞いてあげる」そんな上司だ。そして「前後」とは、トラブルなどが起きた際、率先して部下の前に立つか、もしくは後ろから見守ってくれる上司である。

 こうした関係は信頼の絆を深め、ノルマなどなくとも、そのチームは結果が出せることになる。

●マネージャー、リーダーは部下の「業務」ではなく「人間」を見るべし

 ここで、クイズ形式で考えてみよう。もしあなたの部下に札付きの不良社員がやって来たとする。あなたは以下の2つのどちらを選択するだろうか。

1.報連相を徹底させて、なんとか仕事をさせる。
2.徹底して話し合って、その人の人間性を理解しようと努める。

 著者によれば、日本で圧倒的に多いのは1を選択する上司だという。しかし、報連相のようなマイクロマネジメントも、部下にとってみれば一種のノルマのようなもので、自発性は育たない。さらに言えば、その上司が見ているのは不良社員という人間ではなく「業務」だ。

 これからの時代に必要なのは、対話で部下の「価値観、興味、関心、目的意識」を探るなどして、部下の業務ではなく「人間」を見ることであるという。

 人間として見ることで、秘めている可能性、能力、特長が見えてくる。次にそれを活かせる業務を与えて成長してもらうわけだ。

 本書には他にも、起業家や経営陣向きのアドバイスや、これからの働き方などの提言もあり、新人からエグゼクティブまで、あらゆる世代にとって参考になる新たなビジネス・マインドが網羅されている。

 特に、これからの時代を担い、創っていく、若い世代の人たちに読んで欲しい1冊だ。

文=町田光