「老人=ぶっきらぼう」のイメージにはワケがある! 老いによる心身の変化を漫画で解説!

暮らし

2019/3/18

『まんがでわかる老人 その行動には理由があります』(吉田勝明:監修、ポンプラボ:文、松岡リキ:画/カンゼン)

 コンビニなどのレジ業務でイライラすることのひとつに、小銭を投げるようにして支払う年寄りのことを挙げているネットの書き込みを見た。しかし、そこには“誤解”があるかもしれない。というのも、鈍ってきた高齢者の指先の感覚は、軍手をはめている状態にたとえられるからだ。試してみれば分かるが、軍手をはめて財布から小銭を出すのは難しいし、支払うために手を開くと落としたり投げつけたりするようになってしまう可能性がある。

 こういった「高齢者にありがちなケース」について、漫画をもちいて詳しい考察や解説をしてくれるのが『まんがでわかる老人 その行動には理由があります』(吉田勝明:監修、ポンプラボ:文、松岡リキ:画/カンゼン)だ。本書では、妙好人(浄土教の篤信者)のこんな言葉が紹介されていた。

“子供叱るな来た道だもの 年寄り笑うな行く道だもの”

 国連の世界保健機関(WHO)では高齢者を「65歳以上の人」と定義しているそうだが、老化というのは突然起こるものではなく、典型的な特徴である五感の変化も同時進行ではない。

 人によって違うものの、「視覚」は40代中盤から老眼がはじまり、「聴覚」は50代後半から難聴の傾向になり、「嗅覚」は50~60代までの機能がもっとも高く、70代からは低下していき、「味覚」は50代半ばを過ぎると若い頃に比べて3倍以上の確率で味覚障害が出て、「触覚(温痛覚)」は50代から感覚が弱まり、70代ではその低下が顕著になるという。さらに、内臓機能や骨密度の低下、物忘れといった身体にまつわる変化のほか、思い通りに自分の体が動かないことへのイラつきがストレスとなるうえ、ものごとをネガティブに考えがちになって、うつ傾向となるなど心理的な変化も起こる。

 問題となるのは、よほど注意深く観察していないと家族であってもその老化に気づきにくいことだという。本書の漫画パートでは、妻が夫の実家を訪れて、義母が人の話を聞くときに左耳を相手に向ける仕草をしたり、電話に出ると右手で持った受話器を左手に持ち替えて左耳で聞いたりする様子から、耳が遠くなっているのでは、と心配する描写がある。

■聴覚の老化が、家族不和の原因になることも。その解決策は?

 加齢性難聴は20代頃をピークにまず低音域から聞き取りにくくなり、30代の途中からは逆転して高音域のほうが聞き取りにくくなるという。これにより高齢者は、比較的声の低い夫や息子に話しかけられたときには返事をするのに、声が高めの女性、たとえば妻の声には反応しないということが起こり、姑や舅に無視されたと感じた家族との人間関係がこじれてしまう一因にもなるそうだ。

 音については、こんな問題も起こりがちだ。保育園や公園などでの子どもたちの遊び声が騒音だとする苦情がそれで、「不快に感じる傾向は、難聴になるほど強くなる」のだとか。

 また、「リクルートメント現象」という、ある一定の音量を超えると一気に音が聞こえるようになる現象も、高齢者には起こりやすい。これは高齢者にとっては、静かな状態から急に大きな音が聞こえてくるようなもので、それにビックリしてしまうのは無理からぬこと。本書では、高齢者をただ気遣おうと述べるだけではなく、「高齢者本人も、自分の感覚だけで対象を判断していないか」と考えてみる必要性を説いている。

 地域によっては、保育園など子どもの施設と高齢者の介護施設を一体化した「幼老複合施設」を増やす取り組みがはじまっている。厚生労働省も空き店舗を活用した子育て支援や高齢者の交流を目的とした「宅幼老所」設置の助成を行っている。

 本書においては、高齢者が老化や病気のことを隠すことなくオープンにして、周囲の人たちがその高齢者を受け入れる環境づくりをすることが、みなにとって「幸せな老後」となるのではと示唆していた。本書は、誰もが迎える“加齢による変化”を理解するのに必ず役立つはずだ。私は、本書を読んでから高齢者がICカードを使って買い物しているのを見かけて、「キャッシュレス化もまた高齢化社会にとって必要なインフラなのだ」と気づかされた。

文=清水銀嶺