「今日は俺だけを見てろよ!」オタク女のため“俺様”を演じる男子高生に胸キュン必至!

文芸・カルチャー

更新日:2019/4/8

『オタク女と男子高生』(有村唯/KADOKAWA)

「なんかあったら一番に俺を頼れよ! いいな!?」…これはとある男子高校生のセリフだ。その顔は照れて真っ赤。その理由は、大好きな相手に「言わされている」から――。

『オタク女と男子高生』(有村唯/KADOKAWA)は、Twitter閲覧数2000万オーバーの胸キュン必至ラブコメディ。高校2年生の巻くんは、雑貨屋バイトの先輩・丸野さん(21歳大学生)に恋をしている。そんな巻くんの気持ちはよそに、肝心の丸野さんは現実の恋よりもゲームキャラクターに夢中だ。巻くんの気持ちに鈍感な丸野さんと、そんな彼女に心振り回される巻くんとの、なんとももどかしいやり取りが描かれている。

 丸野さんがハマっている乙女ゲームの推しキャラは、ツンデレ俺様キャラの「タケル」だ。「タケル」は巻くんと同じ男子高生の設定で、しかも顔が巻くんとよく似ている。それゆえ丸野さんは巻くんに「タケル」の姿を当てはめて、いつも「ねぇねぇ巻くんっ! もっと俺様っぽく言ってみて!」などと無茶振りをしてしまう。そんな気持ちに応えようと、巻くんは毎回照れに照れながら「俺様」っぽいセリフを言うはめになるのだ。恋する丸野さんに喜んでもらいたい一心で――。

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「今日は俺だけを見てろよ!」
「俺がそばにいてやるから…落ち込むんじゃねぇよ」

 そんなふうに、丸野さんのためにがんばってセリフを考えて演技をする巻くんは健気でかわいらしい。本来は丸野さんのリクエストにイヤイヤ応えていたはずの巻くんだが、丸野さんのために自主的に俺様セリフを考えて言うシーンも。いずれにしろ変わらないのは、いつも大照れなところだ。不器用な俺様セリフでコミュニケーションを取る2人は一見するとちょっと変な関係だが、年下男子のそんな可愛いところが好きなお姉様方にとってはたまらないシチュエーションだろう。

 丸野さんはガチャ課金の爆死型で、公式グッズにも気合いを入れている。ゲームと推しの動向に一喜一憂、我を忘れることも。そんな彼女を見て、巻くんは「正直理解できない。眼の前に生身の男子高生(俺)がいるってのに…」「ていうかそんなものにハマったら現実の男の理想が高くなっちゃうだろ…!」とひとりやきもき。本作ではそんな2人を見守るような個性的なキャラクター達も登場する。彼らが繰り広げるオタトークと恋愛哲学は「あるある!」と頷けたり、相手を思う深い考え方にしんみり共感できたりする。

『オタク女と男子高生』は、もともと作者のTwitterでシリーズとして投稿されていた作品。ピュアでかわいらしい2人を描いた作品はフォロワーの支持を多く集めた。今回の書籍化では、Twitter掲載分と本編の続きだけでなく、巻くんや丸野さんのそれぞれの日常やミニストーリー、小ネタなどの書き下ろしが50ページ弱収録されている。プロローグの巻くんと丸野さんの出会い編はフルカラー5ページと読み応えがある。

 かわいらしい2人の爽やかでコミカルな恋物語。果たして、丸野さんのリクエストはどこまで暴走するのか? 巻くんの恋は報われるのか? 健気な年下男子に思わずキュンキュンしてしまう本作。クスっと笑ってときめいて、ハッピーな気持ちになりたいときにぴったりの1冊だ。

文=ジョセート