もはやBL!? 600万部突破の人気シリーズ、夢枕獏の『陰陽師』の晴明と博雅の関係がヤバイ!

文芸・カルチャー

2019/3/30

『陰陽師 女蛇ノ巻』(夢枕獏/文藝春秋)

 かねてより、怪しんではおったのです。それが今度は、言い逃れできぬところまで来てしまいました。なんというか……甘いんですよ、稀代の陰陽師・安倍晴明と、その相棒である笛の名手・源博雅のあいだに漂う雰囲気が! というわけで、売上累計600万部突破の大人気シリーズ最新刊『陰陽師 女蛇ノ巻』(夢枕獏/文藝春秋)の、「この主人公バディの関係、もうBLって言っちゃってもいいのでは!?」という魅力を紹介したいと思います!!

「陰陽師」シリーズは、鬼やもののけ、人間が共存していた平安京を舞台に、ご存じ安倍晴明が活躍する物語。

 安倍晴明、闇が闇として残る雅やかな平安の世を生きた、高名な陰陽師である。長身を白い狩衣に包み、眼元涼しく、肌白く、唇は薄く紅を含んだように赤い。幼いころから特殊な才能の片鱗を見せた、一種の天才だったという。そんな晴明の屋敷には、ときおり訪ねてくる者があった。歳は晴明とそう変わらない。高貴な血を引く殿上人であるにもかかわらず、供の者も連れず自然な振る舞いでやってくる。真面目そうな顔だちをした武士で楽人、源博雅である。

 ふたりは毎度、晴明のもとに持ち込まれるもののけ落としや悪霊祓いに挑むことになるのだが──平時の楽しみといえば、晴明屋敷の濡れ縁に座し、庭の蛍など眺めつつ、ほろほろと酒を飲むこと。

「人の想いもまた、あのようなものであるのかなあ──」
 博雅が言うと、
「ほう……」
 晴明が庭から博雅へ視線を移した。
「何のことだ?」
「いやいや、たとえばだ、晴明よ。たとえば若い頃に恋をして、愛しいお方ができたとしよう。(中略)忘れていたと思うていたのに、ある時、たとえばこんな晩に、ふっと、その方のことをなつかしく思い出したりする(中略)」
「そのようなお方がいたのか、博雅よ」(中略)
「おれをからかうな、晴明──」(中略)
「からかっているのではない。そういうおまえが愛しうて、こういう眼になってしまうのだ。博雅よ──」(「さしむかいの女」)

 これまでも、おたがいに「よい漢(おとこ)だ」「存外に可愛いところがある」などと言われて照れる場面や、どちらからともなく「おまえがいてよかった」「そのようなことを言われても返答に困る」「困るか?」「ばか……」なんて言い合うやりとりはたびたび見せつけられてきたわけですが(もっとやれ)、これは極めつきと言えますまいか。

 そもそも、この晴明と博雅、もう一部女子のツボをぐいぐい押してきます。職業からして、専門領域がバーチャルな陰陽師と、フィジカルな武士。性格や容姿を見ても、才能という陰を抱えたクールビューティー・晴明に対して、正直すぎる大型ワンコの博雅。晴明が鬼や精霊を指図して動かす一方で、博雅はそれらがみずから動くよう仕向けてしまう。晴明は人を癒す術を持たないが、博雅は人を癒す心を持つ。たがいに背中を預けられる存在でありながら、同時に最大の弱点となっている構造も完璧。これぞまさしく陰と陽、対立しながら依存して、ひとつを成すにふさわしい性質ですよ!

 もちろん、最新刊の『陰陽師 女蛇ノ巻』、満開の桜を愛でつつ酌み交わす晴明と博雅のもとに木偶人形を持った蘆屋道満が訪れる「傀儡子神」や、十三夜の月に誘われ巨大な薬師如来を目撃した博雅が美しい女の夢を見る「月を呑む仏」など、伝奇ロマンとしての読み応えも抜群。平安の京を行き交うさまざまな想いが、切なく、哀しく、ときに烈しく描かれる。

 怪奇で幻想的な物語を楽しみながら主役コンビに萌えられる、一粒で二度以上、確実に美味しい「陰陽師」シリーズ。ぜひ、最新刊まで揃えてハマってください!

文=三田ゆき