恋する気持ちを丁寧に描く、初恋&再会モノの最高峰!『あいつと俺の「好き」の顛末』

マンガ

更新日:2019/4/22

『あいつと俺の「好き」の顛末』(アオヒトヒラ/笠倉出版社)

 初めて恋に落ちたときのことを、思い出してみてほしい。両思いにはなりたいけれど、気持ちを伝えて、相手との関係が変わってしまうのが怖い。一歩進んだ関係になりたいという切実な想いと、気まずくなるくらいならこのままでいいという臆病な気持ちのせめぎ合い──『あいつと俺の「好き」の顛末』(アオヒトヒラ/笠倉出版社)は、そんな甘酸っぱい胸のうちを思い出させてくれる作品だ。

 主人公の賢一は、母親を早くに亡くし、仕事に忙しい父と2人で暮らしていた。賢一の遊び相手となったのは、隣の家に住む“弟”の春彦、愛称は“はる”。

(C)アオヒトヒラ/笠倉出版社

 寂しい家庭環境で育った賢一にとって、はるは、かけがえのない家族のような存在だ。しかし、はると一緒にいると、かわいいと思う気持ちを止められない。かわいい、抱きしめたい、キスをしたい。けれど“おにいちゃん”である自分が、“弟”のはるに、そんな想いを抱いていいはずがない。この気持ちは、絶対に隠しとおさなくては。そう決意した賢一の心を、神様は汲んでくれたらしく……。

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(C)アオヒトヒラ/笠倉出版社

 はるへの気持ちを整理できないまま大学3年生になった賢一の前に、ふたたびはるが現れた。偶然にも同じ大学に進学し、隣の部屋に住み始めたはるは、幼いころと変わらない振る舞いで賢一のことを慕ってくる。賢一は、まだ生活が整わない彼のために食事を作り、風呂を貸し、ベッドを提供してやろうとするのだが、床で寝ようとする賢一に、はるは上目遣いで「昔みたいに一緒に寝よ?」。……人の気も知らないで!!!

 それからというもの、はるはなにかと賢一のあとをついて回るようになる。初恋の相手との、半同棲生活の始まりだ。無邪気にくっついてくるはるはかわいいけれど、賢一の理性はもう限界。“弟”に、「好き」だなんて言うわけにはいかない。そう考えて踏みとどまる一方で、賢一は、半裸のはるが自分に迫ってくる夢を見てしまい──!?

 初恋モノとしてオーソドックスな展開ながら深く感情移入できるのは、賢一やはるの心の動きが丁寧に描かれているから。想いを伝えたい、でもできないという恋の痛みや切なさはもちろん、想いが通じたときの幸福感も、自分のことのように味わえる。

 恋する心の予習にも復習にも、最適と言える本書。出会いの季節の今、恋の喜びをしっかりと楽しめる本作で、胸キュン予行演習してみては?

文=三田ゆき

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