今知りたい昭和の「裏歴史」。猥雑だった夜の風俗やUFO伝説の真相は?

社会

2019/5/16

『裏昭和史探検』(小泉信一/朝日新聞出版)

 30年続いた平成が終わり、令和という新しい時代が幕を開けました。日本の元号で30年以上続いたものは少なく、平成はその長さでいうと歴代4位にランクインします。ちなみに240以上もある過去の元号の中で、堂々の1位の長さを誇るのが昭和。2位の明治を18年以上引き離して62年という記録をもっており、これだけ長きにわたってひとつの元号が使われるのは、世界でも類を見ないといわれているほど。

 長かっただけに、一口に昭和といっても戦前戦後、さらには高度経済成長など、さまざまな歴史的要素を含んでいますが、本稿で紹介するのはそのような事柄ではなく、教科書には記されないような昭和らしさが網羅された1冊、『裏昭和史探検』(小泉信一/朝日新聞出版)です。

■半世紀にわたって街角に立ち続けた街娼の存在

 本書には、昭和期に話題になった夜の風俗や、未確認生物、UFOなどといった事柄について調査した内容が書かれています。「風俗や未確認生物」というとキワモノのようなイメージもあるかもしれませんが、そんないかがわしく、ある種猥雑な流行の奥に隠れていた本質に、しっかりと焦点を当てて紹介してくれるのです。

 たとえば、今では絶対に使われることのなくなった「パンパン」という用語をご存じでしょうか? これは戦後に生きるために米兵に身体を売っていた街娼をあらわす言葉。なぜ、このような名前になったのでしょうか? すでに70年以上前に使われていた俗語だったためその由来は定かではないものの、「パンパンと手を叩いて女性を招いた」「インドネシア語で女性を意味する『プロムパン』がなまった」「パン2個でついてくる(といわれていた)」など諸説について本書は取り上げています。

 さらに、伝説的なパンパンと呼ばれ、都市伝説のような存在、さらにはドキュメンタリー映画のモチーフにもなった「ヨコハマメリー」という人物についても言及されています。白塗りの厚化粧で、ひらひらの服をきて街に立つ老婆であるヨコハマメリーは、戦後すぐの時代に街娼をし、年老いてからもなお同じような格好をして横浜の街角に姿を現したことで知られています。最後に目撃されたのは1995年。なんと半世紀近く、横浜の街頭に立ち続けていたのです。

 なぜ、彼女がそのようなことをし続けたのかについては解明されていませんが、本書は、彼女について「私たちが思い出したくない過去、認めたくない現実を、メリーは一身に背負い、たったひとりで街に立っていたのかもしれない」と語ります。

■猥雑だけれどエネルギッシュだった「昭和」を見つめ直す

 本書が扱うテーマやトピックには、「裏昭和」と称するだけに猥雑なものが並びますが、それぞれに秘められた歴史的な意味、そして昭和という時代に漂っていた、なんともいえない混沌としたエネルギーを懐かしみ、また慈しむ心が本書には溢れています。

 昭和という時代に生きた人間ならば、そのノスタルジーに共感することができますし、昭和を直接知らなくとも、今でも残るソープランドという風俗の名称が、実はなんの変哲もない当時のサラリーマンが考案したもの、というような、多くの人が知らないであろう昭和に関する雑学をたっぷりと吸収することもできます。

 60余年にわたって長く続いた昭和。すでに遠くなりつつある、混沌としながらもエネルギーに満ち溢れていた時代を、ちょっと違った視点から見つめ直す1冊です。

文=龍音堂