5000万円を失った男が“億り人”に! 人生を好転させ、幸せをつかむための「賢者のタイミング」とは?

ビジネス

更新日:2019/6/19

『賢者のタイミング』(700ニキ/KADOKAWA)

「今すぐ行動せよ!」
「考える前に動き出せ!」

 書店に並ぶビジネス書を見ると、読者を煽り立てるようなフレーズがあふれかえっている。ネットを見ても、「今すぐ起業しよう!」「大学なんて即やめるべき」という声でいっぱいだ。確かに、行動を起こすことは大事だろう。動き出さなければ何も始まらない。うんうん、ごもっとも。だが、何の準備もせずに走り出して、本当に納得のいく結果を出せるのだろうか。

 そんなもやもやとした疑問に答えてくれるのが、700ニキさんの『賢者のタイミング』だ。まずはニキさんの経歴、そしてこの一風変わったペンネームの由来を紹介しよう。実はニキさん、ヴィジュアル系バンドのメンバーとして20歳でメジャーデビューした元プロミュージシャン。翌年には日本武道館ワンマンライブを敢行するも、24歳でバンドを解散。その後、スマートフォンアプリの開発に乗り出すも大ゴケしてしまう。気を取り直して始めた飲食店は軌道に乗ったが、自由な時間を得るために投資家へと転身。順調に資産を増やしていたものの、猫が間違って注文のボタンを押してしまうというまさかのアクシデントを機に、最終的に5000万円(!!)もの大金を失うはめに……。この「ビットコイン700枚購入事件」をネタにSNSでフォロワーを増やし、投資によってメキメキとお金を稼いでいく不死鳥のごとき生きざまを見せつけたことから、700ニキ(700アニキの略)の愛称で知られるように。今では29歳にして、年収1億円以上を稼ぐトレーダーとして活躍中。どん底から“億り人”へ、まさに乱高下するチャートのような半生を送ってきた人だ。

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 失敗と成功を繰り返し、投資家として成功を収めるニキさんが教えるのは“タイミング”の重要性だ。ニキさんいわく、「投資で失敗する人の多くは“タイミング”を無視してやみくもに売り買いをします」とのこと。人生についても、同じことが言えるだろう。大事なのは、新しいことに挑戦する“タイミング”を見極め、すぐさま行動を起こして波に乗ること。本書では、ベストタイミングを察知するための「待つ技術」「決断の法則」「最強メンタルをつくる方法」「本質を見抜く超・観察力」「時代を味方につけるトレーニング方法」について、具体例を交えながら教えてくれる。

 ワクワクする将来のイメージを写真や文字にして壁に貼り、思考を現実化する。世界を広げるために会社、プライベート(趣味)、ネットという3つのコミュニティを持つ。物事の中庸を知るために、同じテーマの本を反対意見も含めて7冊読む。本書には、マーカーで線を引きたくなるような、実践的メソッドがふんだんに盛り込まれている。その中でも、忙しい毎日を送る人におすすめしたいのが「ネットデトックス」だ。私たちは時間があればついスマホを触り、メールをチェックをしたり、カレンダーアプリで予定を確認したり、SNSで細切れの情報を追いかけたりと、目の前のことに追われる日々を過ごしている。しかし、それでは長期的なビジョンを考えられないとニキさんは説いている。時にはスマホの電源を切って、情報をシャットダウンする。可能であれば、数日間海外に行き、ぼーっと過ごす。それによって自分と向き合う時間ができ、人生の目標を見据えることができ、新たな発想も生まれるようになる……というのがニキさんの主張だ。

 実際、ゴールデンウィークを利用して3日間この方法を実践したところ、気分が晴れやかになり、自分自身を見つめ直す機会になった。特に有効だったのは、SNSを一切見ないこと。個々のタイムラインにもよるが、SNSは時事問題に対する怒りや生活の不満など、ネガティブな感情を目にする機会が少なくない。それらを遮断するだけでも、ノイズを受けることなく自分の考えに埋没できるのだ。「海外に行くのは無理」という人でも、数日、いや1日スマホの電源を落とすだけでも気持ちに余裕ができるはず。それによって、新しいことを考える余白が脳に生まれるだろう。

 本書において、ニキさんは繰り返し「自分は特別な存在ではない」「むしろ自堕落な人間だ」と語っている。そして、「ダメな自分でも気持ちひとつ、行動ひとつで変われる」ということを説いている。「ビジネス書? 自己啓発書? どうせ成功者がマウント取ろうとしてるだけでしょ?」と思っている人にこそ、この本を読んでほしい。焦らず急がず、自分のペースで準備を整えたうえで最高のタイミングをキャッチし、幸せをつかむ方法がきっと見つかるはずだ。

文=野本由起