アスペルガー症候群の夫と生きる妻を襲う、カサンドラ症候群。その対処法とは?
2019/6/26
“カサンドラ症候群”という言葉がある。アスペルガー症候群の夫を持つ妻が、夫と情緒的な関係を築くことができずに心身に不調をきたし、さらに周囲に理解されない状態を指すことが多い。
『アスペルガータイプの夫と生きていく方法がわかる本』(大和出版)は、医師でメディアにも多数出演している宮尾益知氏、臨床心理士でカサンドラに関する書籍監修も多い滝口のぞみ氏の2人によって監修された、信頼の置ける本だ。
“妻と夫との認知のしかたに違いがあり、夫がわるいわけでも、妻がわるいわけでもないのです”
このように、夫と妻のどちらかを悪者にするのではなく、メカニズムを明らかにし、改善に向けた具体的な対策を提案しているのが本書の特徴だ。アスペルガータイプの人は多数派と認知のしかたが異なるため、コミュニケーションに齟齬を生じやすい。また、互いの思い描く家庭像にズレが生じている可能性や、親や家族の価値観に影響を受けすぎている場合もあるという。
本書が当事者の苦しみに寄り添いながら提案する具体策を紹介しよう。
(1)まず落ち着いて伝えたいことをしぼる
感情に任せて一気にまくし立ててしまうと、夫は情報処理に困ってしまうことがある。本書では「夫は、不機嫌な態度の妻が苦手なうえに、同時にいくつものことを言われると、求められていることがわからず不快になります」と述べており、ひとつ実行されてからお願いを増やしていくことが有効だという。
(2)状況を誰かに理解してもらう
“カサンドラ症候群”にはもともと「他人に理解されない」という意味があるそうだ。カサンドラについて解説している本などを活用し、親や友人に正しく伝えることで、自分の状況を理解してもらえる誰かを作ることが大切だという。
(3)動画を使ってイメージを共有する
断片的で曖昧な情報ではお互いの理解に違いが生じることがある。具体的なお願いごとや一連の作業過程を動画で見せると理解しやすいという。さまざまな媒体を活用してコミュニケーションを図れるのが望ましい。
(4)専門クリニックで家族のことを相談する
カサンドラ症候群に陥っているケースでは、家族全体が機能不全にである可能性もあるという。専門のクリニックでカウンセリングを受けるなどの対策を本書は勧める。
カサンドラ症候群の当事者にも、アスペルガータイプの当事者にも、当事者の周りの人々にも、それらを理解する最初の1冊としておすすめしたい。
“アスペルガータイプの夫と暮らすには、特性に応じた対応が必要です。しかし、それを「夫のため」にやる必要はありません。あくまで「自分のため」「2人のため」だと捉え直してみましょう”
文=えんどうこうた
この記事で紹介した書籍ほか
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