人からどう思われるか気にしすぎる人へ… 気持ちを伝えてホッとできるようになる方法

暮らし

公開日:2019/7/12

『よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方』(平木典子/主婦の友社)

 あなたはこんなことで困ったりはしていないだろうか?

「人と違う自分の意見や気持ちがなかなか言えない」
「立場が上の人に質問などをすることができない」
「自分の都合があるのに、誘いを断ることができない」

 さまざまな人との関わりの中でこのように困ったり、その結果トラブルに巻き込まれたりすることも少なくない。そんな人たちが、自分の意見を気持ちよく相手に伝えるための本が『よくわかるアサーション 自分の気持ちの伝え方』(平木典子/主婦の友社)である。

イラスト/松本奈緒美

「アサーション」とは、”自分も相手も大切にした自己表現”のことで、相手と心地よい雰囲気の中でコミュニケーションを行うための方法である。それは、自分の気持ちを無理に押さえてしまうのではなく、逆に、やみくもに自分の意見を押し付けるのでもなく、相手を尊重しながら自分をしっかり表現して、お互いに心地よい関係を作っていこうというものだ。

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 本書では、具体的な12個の事例を通して、よりよい自己表現の方法が学べるようになっている。それぞれのシチュエーションに対する反応として良い例と悪い例が記載されており、フルカラーの見開きで、イラストと共にわかりやすく理解することができる。

 では、その中から実際に3つのありがちなシチュエーションを紹介していこう。

「新人なのに、誰も仕事を教えてくれません」

イラスト/松本奈緒美

 入社した会社は上司や先輩たちが忙しく、仕事を教わりにくい雰囲気。何も身につかないまま雑用をするだけの日々で不満が募る。そんなときは、そのままネガティブなほうに流れたり、あるいは反抗的になったりせずに、限られた範囲で自分にもできることをこのように考えてみよう。
例:「あいた時間には職場を観察しながら勉強し、チャンスに備えよう。忙しそうな先輩には”何か手伝えることはありませんか”と聞いてみよう。少しでも話をする機会を作っておけば、仕事のやり方を教えてもらう機会もできるから」

「お酒が飲めないのに、強引に飲み会に誘われます」

イラスト/松本奈緒美

 自分はお酒が飲めないのに上司が飲ませようとしてきて断りにくいとき。不機嫌な顔をするわけにはいかないし、黙って言うことを聞くのもつらいだろう。そんなときは、前向きな態度で上司にこう言ってみよう。
例:「みんなで飲むのは本当に楽しいですね。でも、僕はお酒に弱いのでノンアルコールを頼みます。でも楽しんでいるので気にしないでください」

「ママ友に無理なことばかり頼まれます」

イラスト/松本奈緒美

 ママ友に買い物や留守中の子どもの面倒を押し付けられ、それも、いつも直前に頼まれるとき。関係上、強く言うことはできないが、これ以上自分の負担は増やしたくないだろう。そんなときはこのように穏便に断りつつ、自分の希望も伝えてみよう。
例:「困ったときはお互い様だから、私にできるときは引き受けますね。でも今日は予定があって無理なの。これからは前もって言ってくれると、助かるわ」

 これらのセリフは、全て柔らかいようでいて、自分の意見ははっきりと伝えている。相手の気持ちを「それも大変なこととは思いますが…」「せっかく誘ってもらいましたが…」と受け止めたうえで、あくまで”私は”こう思っている、というように、個人の胸の内を明かすようにしていることもポイントだ。

 もちろん、誰もがすぐに十分にアサーションを行えるとは限らない。「私の意見なんて正直に言ってもよいのかな?」「相手に嫌われたらどうしよう?」「自分の考えが間違っていたらどうしよう?」など、アサーションを妨げる色々な考えが頭に浮かぶかもしれない。この本では「誰でも自分の意見を言って大丈夫」「相手と意見が違っていても大丈夫」「ときには失敗しても大丈夫」など、そうした考えから自由になるヒントがたくさん紹介されている。

 アサーションの能力を伸ばしていくために「言葉だけでなく、表情や姿勢をうまく使おう」「自己表現が身についている人を観察して自分に取り入れよう」「じょうずな質問が、楽しい会話のカギ」など、具体的なアドバイスも多数掲載されている。

 一度胸の内を正直に明かして話すとそれまでの緊張が解け、楽になったという経験はあるだろう。正直なことを言うのは恥ずかしかったり、こわかったりするが、全て本音である必要もない。身近な人に「実は恥ずかしいから言えなかったけど、あのとき本当はこう思ってたんだ」というように少しずつ試していくようにすれば、どんなにホッとできるかがわかるだろう。あなたのその勇気を本書がきっと応援してくれるはずだ。

文=ジョセート