久々に再会した母は詐欺グループの一員だった! 人生転落して逮捕されるまでの実録ドキュメント

社会

2019/7/18

『ドキュメント 逮捕!』(「裏モノJAPAN」編集部:編/鉄人社)

 テレビでもモザイク付きでたびたび放映されている逮捕の瞬間。警察と被疑者のギリギリの攻防は、いつの世も多くの人びとから関心を集める。しかし、映像で伝わるのは、そのほんの一瞬に過ぎない。その内幕や背景へさらに鋭く斬り込む、『ドキュメント 逮捕!』(「裏モノJAPAN」編集部:編/鉄人社)は、逮捕された人物たちが自ら語る、その生々しい背景に迫る1冊である。

■実母との再会で詐欺グループの一味に引きずり込まれる

 2005年3月。福岡県某市の路上で、「おいコラ、小原! 逃げんな、止まらんか!」と、警察官の怒号が響いた。追われていたのは数日前にテレビの公開捜査番組で顔写真が公開されたある男。母や兄と共に、親子でカード詐欺を働いていたうちのひとりであった。

 さかのぼって1969年。福岡県内で生まれた彼は、5歳のときに両親が離婚し、父親と再婚相手である若い女性に引き取られた。小学生になる前に腹違いの妹が生まれてからは、母親の態度が豹変。「ホント憎たらしいガキだね!」とののしられる日々が続くなか、振り返れば11歳で既に補導歴は数十回にも及ぶほど“ワル”に染まっていた。

 しかしその後、紆余曲折を経て一時期は結婚して子どもを授かりながら、平穏な生活を過ごしていた彼。再び物語が暗転し出したのは、29歳のときだった。

 当時、住んでいた愛知県から久しぶりに福岡県へ帰省した彼に、実母は「私の仕事手伝ってみる?」と持ちかけた。そのときの実母の仕事は、カード詐欺の“買い子”だった。元締めは、盗難カードの調達役であるプロの車上荒らし。他人のカードを使い、家電製品やブランド品を購入する買い子や、購入品を質屋でさばく“換金役”などからなる、犯罪グループの一員だったのだ。

 初めは「冗談だろ?」と返したが、当時はすでに妻と離婚していたことから「万が一パクられたところで、誰にも迷惑がかからない」と彼は腹を決めた。半年ほどは“買い子”としての役割を務めていたが、元締めの現場へ立ち会ったことをきっかけに、車上荒らしにも手を染めるようになった。

■公開捜査番組が逮捕の決め手に!

 そして、30歳になる頃にはカード詐欺グループを自ら結成した彼であったが、買い子役を務めていた実母と、換金役を務めていたその彼氏が覚せい剤で逮捕されたのをきっかけに、事態は急変する。当時の愛知県警は、頻発するカード詐欺事件の手口が、実母の行っていたものと同一であることに注目。もうひとりの換金役、実兄の名前も全国のレンタカー屋や質屋の買い取りリストに記載されていたことから、あたりを付け内偵捜査を始めていた。

 その7カ月後、迫りくる逮捕の影に怯えたのか実兄は警察へ出頭する。半年後には、覚せい剤による服役期間を終えて、一般社会へ戻っていた実母がふたたび逮捕されたものの、彼は「オレだけは絶対、時効まで逃げ切ってやる」と意気込み、福岡県内で隠れていた。逃亡中にはさまざまな捜査かく乱も狙ったようだが、最終的にはテレビの公開捜査番組をたよりに、視聴者から警察へ寄せられた情報が命運を分けた。

 食事を終えて食堂を出た彼は、待ちかまえていた数名に呼び止められた。300メートルほど全力疾走し、ビルの非常階段を駆け上がった先で「逃げ場がないじゃねぇか」と気が付くも、時すでに遅し。2階の踊り場でうつぶせに抑え込まれ、「ガラ確保!」という警察官の怒声と共に、彼の逃亡劇は終幕を迎えた。

 さて、本書ではこのほかにも、さまざまな悪辣な犯罪に手を染めてしまった者たちの獄中手記も含めた17編もの実録エピソードが収録されている。ふだん私たちの目には触れない“予想外の結末”の数々を、本書で追ってみて欲しい。

文=カネコシュウヘイ