ロングセラー絵本の原画など貴重な資料を一挙公開!「みる よむ あそぶ 金の船・金の星 子どもの本の100年展」

文芸・カルチャー

2019/7/23

 大正8年、童謡童話雑誌『金の船』(のちに『金の星』)の刊行以来、『かわいそうなぞう』(つちやゆきお:文、たけべもといちろう:絵)、『絵本 おこりじぞう』(山口勇子:原作、沼田曜一:語り文、四国五郎:絵)など、多くの人にとって思い出深い名作を世に送り出してきた金の星社が、2019年11月、創業100周年を迎える。

 これを記念して、同社は、金の星社創業100周年記念「みる よむ あそぶ 金の船・金の星 子どもの本の100年展」を、7月19日〜7月28日の期間中、上野の森美術館で開催。創業当時の資料や人気絵本の原画が展示され、ワークショップや作家イベントなども催される予定だ。

 会場に入るとすぐに、金の星社の成り立ちについて知ることができる、貴重な資料が並んでいる。

「Ⅰ ヨム」と題されたコーナーでは、『金の船・金の星』の作品を紹介。雑誌『金の船 第一巻第一號』や、初代編集長・野口雨情の「社の梅」原稿などを見ることができる。

「Ⅱ エガク」のコーナーでは、『金の船・金の星』を彩った原画を展示。竹久夢二、岡本帰一、寺内萬治郎らの筆の力に、圧倒されることだろう。

「Ⅲ ウタフ」のコーナーは、歌をテーマに資料を構成。「七つの子」「青い目の人形」「赤い靴」といったおなじみの童謡は、野口雨情が書いた詩に本居長世が曲をつけ、『金の船・金の星』に発表されたものだそう。

 さらに「Ⅳ カク」のコーナーでは、芥川龍之介から金の星社創業者・斎藤佐次郎に送られた書簡など、作り手たちの想いが読み取れるような資料を見ることができる。

 続く展示では、「ことば」「いきもの」「のりもの」「たべもの」「へいわ」の5つのカテゴリ別に、絵本の原画や複製原画を楽しめる。

「ことば」とカテゴライズされた作品からは、『これはすいへいせん』(谷川俊太郎:ぶん、tupera tupera:え)の原画など、「いきもの」のコーナーでは『にじいろのしまうま』(こやま峰子:作、やなせたかし:絵)、「のりもの」では『あっ!』(中川ひろたか:文、柳原良平:絵)、「たべもの」では『ちいさなたまねぎさん』(せなけいこ:作・絵)、「へいわ」では『チロヌップのきつね』(たかはしひろゆき:文・絵)の原画や、『ガラスのうさぎ』(高木敏子:作/武部本一郎:画)の著者・高木敏子氏の直筆原稿などを、じっくりと眺めることができる。

 会場には、家族みんなで見て・触って、絵本の世界を感じられるアクティビティも。

「みんなの図書館」のコーナーには、自由に読める本が多数揃っている。ここで読んで気に入った本は、すべて1階のレジで購入可能だ。

「せんろはつづく 巨大ダンボール列車」は、絵本『せんろはつづく』(竹下文子:文、鈴木まもる:絵)からそのまま飛び出してきたかのようなダンボールの巨大列車に、著者の鈴木まもるさんが丸2日かけて着色したもの。

 鈴木さんは、「今回の展示は、立体であることを生かして、列車の正面側は絵本と同じカラーリングに、裏側は、会場に来てくださった人だけが楽しめる“お楽しみ”のカラーリングにしました。この展示を通して、子どもたちに、絵本の世界は自分たちの生活する世界につながっているんだということを実感してほしいと思います」と笑顔を見せた。

 また、台東区を舞台にした絵本『パンダのパンやさん』(岡本よしろう:作・絵)からは、フォトコーナーとおままごとセットが登場。パンやさんの袋を持っての記念撮影や、著者の岡本よしろうさんが彩色したかわいいおままごとセットを楽しめる。本作に描かれているお店は、記念展が開催されている上野の森美術館のご近所さん。展覧会を満喫したあとは、絵本『パンダのパンやさん』や、会場に置かれた「下町グルメマップ」を片手に、お散歩に出かけてみるのもいいかもしれない。

 そして、大人気『へんしんトンネル』(あきやまただし:作・絵)から生まれたのは、「へんしんトンネルぐるぐるめいろ」。ダンボールで作られたちびっこサイズの立体迷路、ゴールまでたどりつけるかな? 金の星社・広報室の金澤真美子さんは、「『100年の笑顔・夢 100年先の未来も』という標語を掲げているので、アクティビティは、エコという観点からもダンボールで仕上げました。絵本は、紙でできているもの。紙ならではの良さが、来場者のみなさんに伝われば」と語ってくれた。

 グッズ販売コーナーには、絵本はもちろん、いもとようこさんら8人の作家の絵をモチーフにしたマスキングテープ、金の星社の絵本がすべて入るサイズの『赤い靴』トートバッグのほか、『金の船』復刻版(展示会先行販売)など金の星社の歴史を感じられる商品も。サイン本やポストカード、クリアファイル等、会場限定で販売される商品も多いので、ぜひこの機会に手に入れたい。

 100年親しまれた本を、100年先の未来へも届けるために──大人にとっては懐かしく、子どもたちにとっては今まさに夢中になれる本をきっかけに、日本の近代児童文化の成立と、それをリードしてきた金の星社の歴史を振り返ることができる本展。過去からの積み重ねの先に、現在、未来があることを、大人も子どもも、楽しみながら体感することができるだろう。

取材・文=三田ゆき