全国で銀行・病院・介護施設が消えていく!? 加速する人口減少が47都道府県に与える衝撃を「地図」で予測!

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更新日:2019/8/7

『未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること(講談社現代新書)』(河合雅司/講談社)

 日本全体が「老後資金2000万円」問題に揺れている。私たちの老後が想像以上に暗いことを意図せず公表してしまった金融庁だが、現実はさらに深刻であることをお伝えしなければならない。

『未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること(講談社現代新書)』(河合雅司/講談社)は、超少子高齢社会を迎える日本の未来を予言する。著者はこれまで『未来の年表』『未来の年表2』で話題を集めてきた河合雅司氏だ。前著では、これからの日本で起きることを時系列で「年表」にまとめ、この先起こるであろうことを説いてきた。今回は「人口減少によって起きる日本各地の異変」を「地図」にして視覚的にも分かりやすく未来予測を展開する。

 上の日本地図をよく見てほしい。約25年後の日本は2015年と比べると、秋田県の人口が約6割に縮小し、大阪府の人口は150万人も減少する。それだけではない、東京都と沖縄県を除いたすべての道府県が人口減少に見舞われる。冗談や誇張抜きで、私たちが生きている間に「日本の地方」は消滅してしまう可能性があるのだ。

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 もしかすると、北海道夕張市で起きた財政破綻が今後全国各地で起きるかもしれない。つまり「老後資金2000万円」を個人で蓄えられたとしても、自分の住む街が破綻すれば想定していた生活もできなくなるわけだ。日本の人口減少はそれほどの破壊力を持つ大問題であり、現実的な課題である。

■病気になっても怪我をしても、街には医者がいない!

 本書のデータによると、2035年に人口が6500人を割る自治体が450を超えるそうだ。なぜ「6500人」というボーダーが必要なのか。この数字を割ると、喫茶店や遊戯施設だけでなく、銀行や病院、介護施設まで維持が厳しくなるからだ。「病気になっても、あるいは突然怪我をしても、街には医者がいないから診察を受けられない」――こんな背筋の凍るような事態が、わずか15年後に全国各地で起き始めるかもしれない。

 特に深刻なのが東北地方で、秋田県をはじめとする地域は、増え続けた高齢者さえもやがて減少していく。こうなれば自治体機能は崩壊し、街として居住することが難しくなる。

 2045年になると、鳥取県の人口は44万人、山梨県は59万人になると予測される。一方で、東京都は人口約1300万人。その差は約30倍だ! 極端すぎる人口の大都市一極集中と、限界を迎える地方自治体の機能崩壊によって、47都道府県という形を維持することさえ難しくなるかもしれない。

 こういった近未来の課題は他人事ではない。25年後の日本、つまり現在60歳以下の人であれば将来実際に直面する可能性が非常に高い、歪な日本の姿なのだ。

■人口を維持する東京すら「住みにくい街」に変わってしまう!?

 では、東京都はどう変化していくのだろうか。本書の説を端的に述べると、しばらくは人口が増え続けるが、高齢化によって街の姿が激変する。

 2025年には練馬・足立・葛飾・杉並・北区の地域で、4人に1人が高齢者という事態となる。現在の東京23区は「ビジネス優先」「若者中心」で成り立っている都市だが、多くの地区で今後は街の在りようが大きく変わるはずだ。

 若者を意識した渋谷や原宿といった街ではやがて高齢者をターゲットにしたビジネスを展開することになるだろう。「おばあちゃんの原宿」と呼ばれる巣鴨の地蔵通りのような風景が当たり前になるかもしれない。

 さらに、街に高齢者が増えれば、電車やバスの乗降に現在よりも時間がかかるようになり、現在の過密な通勤ダイヤには支障が出るかもしれない。各地区で介護難民が続出し、老々介護はますます加速する。高齢化により中小企業や町工場は維持が難しくなり、それが大企業にも大打撃を与える。便利で住みよい街というのが東京のブランドだったが、それが傾いていく日も近いのだ。

 果たしてこの恐ろしい未来は防ぐことができるのだろうか? 河合氏はこう提言する。「戦略的に縮む」、そして日本が「ドット型国家」になればいい。人口減少が避けようのない未来であるならば、住める地域を中心に「ミニ国家」を作るという発想だ。

 ここまで本書から背筋が寒くなるような恐ろしい未来像をご紹介してきたが、河合氏はこのようにも述べている。

“現時点では厳しい未来が予測される地域でも、今後の取り組み方次第で「未来」は書き換えが可能ということでもある”

 私たちが人口減少問題を「自分事」として前向きに対処すれば、本書の内容は、予言には「ならない」かもしれない。そう願いたいし、そうしなければならない。「老後資金2000万円」問題に揺れている今の日本だからこそ、この問題に真剣に向き合うべきなのだ。

文=いのうえゆきひろ