手術10回目! 大腸も全摘出で人工肛門! しんどいのに笑える。本邦初の実体験闘病ギャグエッセイ『腸よ鼻よ』!【次にくるマンガ大賞2019「Webマンガ部門」第3位】

マンガ・アニメ

2019/9/14

『腸よ鼻よ』(島袋全優/KADOKAWA)

 わたしはよくお腹を壊す。電車内での急な腹痛、スパイスカレーの刺激にも弱い。海外旅行でも思い出がすべてトイレ生活だったことも。そして、年齢的に大腸内視鏡検査を受けてみたいけど、怖くて、ずっと逃げ続けている。そんなピーピーですら辛いのに国指定の難病「慢性持続型全大腸型潰瘍性大腸炎」とやらに罹ったら、どんだけ苦しいことだろうか。

 マンガアプリ「GANMA!」で連載されている島袋全優さんの漫画『腸よ鼻よ』がこのたび単行本化され、9月13日に発売となった。

 漫画家を夢見るティーンエイジャーだった島袋全優は、原稿執筆とバイトに明け暮れる毎日を送っていたが、いつしかトイレに行くたび便器が血まみれに。はじめは腸炎と診断されるものの一向に回復せず、改めて検査を受けてみると実は難病特定疾患であることが判明する。その後は、「取材」と称して入退院を繰り返しながらも、発病した学生時代から漫画家になってからも続く闘病生活を実体験をもとに明るく描き続けている。

 医療ものや闘病記と聞くと、まず、難解だったり、時に目を背けたくなるような場面があったり、また、お涙頂戴ストーリーで一方的な愛を押し付けてくるものもあるが、『腸よ鼻よ』に関して、作者は決して同情して欲しいなんて1mmも思っていない。

 手術を10回も行い、大腸も全摘出、ストーマ(人工肛門)を5回するなど、想像しがたい過酷な局面においても常にユーモアを持って、それをギャグ漫画にして発信してくれている。

だからと言って、常に前向きポジティブな姿しか見せないわけではなく、年相応の悩みもあったり、プロの漫画家として仕事に対する責任感も強くあり、読み進めていくと、その姿に共感し、作者と面識がないにもかかわらず、まるで親戚のように応援している自分がいた。

 何よりも作者にとっては、入院をし、点滴を打ちながらも漫画を描き続けることが生きるモチベーションになり、それがあるからこそ、乗り越えられているのだ。(とは言っても仕事をしすぎて体調を崩したりもしているので、心配。)

 それは、作者が自分自身と向き合い、自分を知ってるからだ。自分の性格や特徴を活かした生き方をしているので、病気を患っているにもかかわらず、可哀想というムードには一切ならない。どうせならこの状況をとことん楽しもう!という思いすら伝わってくるから、また、心配になったり…。

 その上、作者の家族はとても仲がよくて、協力的。病院の人たちや仕事仲間たちもキャラクターが強いがとても温かい。そんな人たちを見ているのも楽しく、次から次へと登場する人物たちを“愛”を持って描いているからこそ相手たちも“愛”を持って作者に接している。「GANMA!」に書かれていた「あとがき」には、病院で仲良くなった入院患者数名でグループチャットを作ったくだりがあったり、職業や年齢がバラバラな患者さんたちともすぐに打ち解けている様子が伝わる。

 また、ネットで情報を調べる医者や、点滴刺すのが下手くそな看護師が登場したり、「腸に良いもの(たまごボーロ)」をもらいすぎてしばらく見るのも嫌になったなど、入院したことがある方なら誰もが共感するであろうことが病人ならではの視点でたくさん描かれているのも興味深い。

 さらに、例えば、ステロイド服用時や風邪をひいている時はあまり公共のトイレは使わない方がいい、という作者の経験から学んだり…。

「GANMA!」では幾度となく休載しながらも連載を続け、ついに、今回、待ちに待った単行本化となった 『腸よ鼻よ』(1巻には第1話~11話まで収録)。今までに見たこともない実体験の闘病エッセイを読み終えると、なんだか逆にこちらが勇気をもらっていることに気づく。

 まさに、今、この記事を書いているとき「次にくるマンガ大賞2019 Webマンガ部門 第3位」受賞のニュースを知った。きっと、わたしのように作品や作者を応援する気持ちから投票した人も多いのだろう。

 食事制限と戦う作者に比べたら毎日、普通にご飯が食べられることに感謝しなくていけないし、大腸検査にビビっているような場合ではない。

 作者の腸はどうなってしまうのか? このままずっと読み続けたいので、くれぐれも無理をしないで欲しいと、ただただ願うばかりだ。

文=松崎桃子