あなたは、“友達”を食べられますか? 人間の倫理観が崩壊する、究極のカニバリズム学園ホラー

マンガ

公開日:2019/9/24

『友食い教室』(柑橘ゆすら:原作、沢瀬ゆう:原画/集英社)

 19世紀にイギリスで起こった「ミニョネット号事件」を知っているだろうか。これは漂流によって4人の船員が飢えや脱水に苦しんだ結果、虚脱状態に陥っていた1人を3人の船員がやむを得ず殺害し、食料にしてしまった食人事件である。裁判では殺人罪が適用されたものの“無罪が妥当である”という世論の声を受けて、結果的には全員が禁固6カ月に減刑された。おそらく、この事件についてはさまざまな意見があるだろう。はたして、自救行為としての殺人は正当化されるのだろうか。

“勉学に勤しみ、友人と語り合い、ときに恋をする”

 桜坂高校1年A組の生徒も、こんなありふれた高校生の日常を送っていた。彼らの運命を変える、不気味なメールが一斉送信されるまでは――。

「第1回 友食いゲーム
 状態 健常者 / ワクチン 十二指腸」

 天野翔太(あまの・しょうた)が自身に送られたメールの異常性に気付いたのは、クラスメイトの佐伯小春(さえき・こはる)の頭部が「ぷしっぷしっ」と膨らみ始めた瞬間だった。あっという間に何十倍にも膨れ上がった頭は、大きな破裂音と共に弾け飛んでしまう。

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【友食いゲームのルール】
・毎回1人の感染者が選ばれ、感染者にのみドナー名が知らされる
・感染者が助かるためにはドナーのワクチンを接種すること
・ワクチンを接種できない感染者や学校を休んだ生徒は死亡する
・ゲーム不参加者のワクチンは対象外

『友食い教室』(柑橘ゆすら:原作、沢瀬ゆう:原画/集英社)は、ある高校を舞台に繰り広げられる恐怖のデスゲームを描いたマンガだ。“自らが助かるためには友達の体の一部を食す”という、なんとも不条理なルールが課せられているため、描写は想像以上にグロテスク。なかでも、第4回ゲームのワクチンに指定された「右目」をぐりんとくり抜くシーンや、第5回ゲームのワクチンに指定された「右手の爪」をペンチではぎとるシーンはあまりの残忍さに目を背けてしまうほど。

 ゲームが進むたびにクラス全体の疑心暗鬼は加速。護身用のナイフを持ち歩き、最終的には人間の肉を調理するための寸胴鍋や包丁を用意するようになってしまった。はたして、人間の生存本能は彼らが持つ最低限の倫理観すら壊してしまうのか……? 生き残りをかけたカニバリズム学園ホラーを通して、“人間のタブー”について考えてみてほしい。

文=山本杏奈