食育にも役立つ『やさいのがっこう』最新刊の主人公は、キャベツくん! 子どもの素直な気持ちに寄りそう絵本

文芸・カルチャー

公開日:2019/10/12

『やさいのがっこう キャベツくん おはなになる?』(なかやみわ/白泉社)

 なかやみわさんによる人気絵本シリーズの最新刊が登場! 第4作『やさいのがっこう キャベツくん おはなになる?』(白泉社)の主人公はキャベツくんです。

 子どもがよく知るやさいが愛らしく描かれ、大人も微笑ましい気分で読める本シリーズ。学校で「おいしくなる」方法を学ぶやさいたちと一緒に、子どもも「たべもの」や「やさい」について楽しく学べる食育の絵本です。前回は主人公のとうもろこしちゃんが、髪のような“ひげ”が長くなることでおいしくなることを学びました。

 今回の主人公・キャベツくんは読書好きの物知りで、自分がおいしくなる方法をすでに知っています。ところが、キャベツくんの存在をおびやかす出来事が…!? 本書にも、物語を通して親から子どもに伝えたいことがたくさん詰まっています。

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■お友だちとの違いについて考えてみる

 キャベツくんがいつも本を読んでいる理由は、知らなかったことが頭に詰まっていくと重たくておいしいキャベツになれるからです。ほかのやさいとの違いも知っていて、ピーマンくんには「ピーマンは頭が軽くても大丈夫」だと教えてあげています。

 子どもには、キャベツとピーマンの違いとともに「自分とお友だちも違うんだよ」「大きくなりたいのは一緒だね」などと教えてあげられそうです。

■やさいたちの素直な会話が親しみやすい

 キャベツくんが読む本にはこんなことも書かれていました。青虫に見つかると葉っぱがどんどん食べられてしまうのだと。そこでキャベツくんはワラで虫除けの洋服をつくり、そこにすっぽりと入りました。

 キャベツくんは「これで安心だ!」と真剣ですが、周りのみんなはいつもとは違う姿に大笑い。この素直な反応がとても子どもらしいと感じました。筆者の3歳息子も「何やってるの!?」「かわいいねえ」と同調して笑っていました。

 ほかのページでも素直で可愛らしい会話や行動をするやさいたち。そんなところが子どもには親しみやすく大人には微笑ましい、本シリーズの魅力の一つだと感じます。

■キャベツくんが本の面白さを教えてくれる

 あるとき、大変なことが起きました。ピーマンくんがある本を読んで、キャベツには花が咲くことを知ったのです。もしお花だったら、もう「やさいのがっこう」にはいられない! と思い悩むキャベツくん。ほかのみんなもキャベツくんを心配しますが…。はたして、キャベツくんはおいしい野菜になれるのでしょうか?

 本書は、キャベツくんの本好きがポイントになっています。読めば読むほど面白くてもっと読みたくなるし、驚くような発見があって考えるきっかけにもなる。読んだ内容をみんなに聞いてもらうのも楽しいもの。そんな本の面白さや興味深さを、本書を通して伝えられそうです。

■読み聞かせ後の会話までを楽しみたい

 毎日のように目にする野菜だからこそ親しみやすく、「キャベツってどうやったら重くなるの?」「どうして泣いてるの?」などと、大人が想像できないような子どもの心の動きが感じられる本書。親子でさまざまな発見をして、読み終わったあとの会話までを楽しみたい一冊です。

文=吉田有希