「夫のトリセツ」があれば、“使えない”夫も変えられる!? 愚痴を聞いてくれない、生返事の夫たちのトリセツ

恋愛・結婚

公開日:2019/10/19

『夫のトリセツ』(黒川伊保子/講談社)

 夫のことを褒める妻をあまり見たことがない。よく聞くのは、「使えない」「気が利かない」「触るのもイヤ」とひどくネガティブな話ばかり。妻としてはもう少し優しくしてあげないと、と頭ではわかっているのにイライラは募るばかりで…。

「夫婦仲がよくなる」と大きな反響を呼んだ『妻のトリセツ』から1年。著者の黒川伊保子さんが女性向けに書き下ろした『夫のトリセツ』(講談社)が刊行された。人工知能の開発をしていて気づいた「男性脳と女性脳のチューニングの違い」に着目し、夫にイラッとしないためのアイデアが数々紹介されている。なんと、男性脳には、女性には想像もつかないような事実が隠されているというのだ。

■「それは大変だったね」と共感してもらいたいだけなのに!

【「こんな夫にイラッ!」あるある その1】
勤め先でイヤなことがあったので、夫に愚痴を言いながら打ち明けたら、なぐさめてくれるどころか、「君もこういうところを直したら?」と逆に指摘されて、イラッ!

 こんな経験はないだろうか。本当は「そんなことがあったなんて大変だね」と共感してほしいだけなのに、なぐさめるどころか解決策を提案された。そんなこと聞いてもいないのに…。もう二度と夫に愚痴は言わない、と心に決める瞬間である…。

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 だが、夫は悪意があってこう言っているわけではない。本書によれば、男性はその昔、狩りをしていた記憶の名残で、人との対話でも「戦いに勝つための結論」を急ぐ。解決策を挙げるのは、誠意がないわけではなく、彼なりの妻への愛情表現なのだ。

■私の話、聞こえてる…(怒)?

【「こんな夫にイラッ!」あるある その2】
映画に行く約束をしていたので「どこに行く?」って話しかけたら、「はぁ?」と返された。何度も話してたのに覚えてないなんて、もう信じられない!

 本書によると、男性脳はおしゃべりが苦手なものらしい。おしゃべりなどしていたら狩りに集中できず、命が危険にさらされてしまうからだ。驚くことに、30秒以内に問題解決の糸口がつかめないような話が3分以上続くと、途中から脳が言語のインプットをやめてしまい、妻の話がモスキート音のように聞こえるそうだ。こっちは真剣に話してるのにモスキート音って何(怒)!?

 落ち着いてまとめると、こういうことらしい。たとえばしばらく会話した後にふと出たこんな質問を、夫と妻それぞれの立場で脳内変換してみると…。

【実際の会話】
妻「ねえ、映画に行く約束したよね?」
夫「はぁ?」

【妻の脳内変換】
妻「ねえ、映画に行く約束したよね?」
夫「そんな約束したっけ?」
妻「イラッ!」

【夫の脳内変換】
妻「ほぇ、ほぇほぇぴ〜?」
夫「え? なんて言ったの?」

 夫には妻の問いかけが「ほぇ、ほぇほぇぴ~?」としか聞こえないから、「はぁ?」としか返せない。これは、「はぁ? (ごめん、なんて言ったの?)」と聞き返しているだけ。だが妻は約束を反故にされたようでイライラしてしまう…。

 夫としては、声がモスキート音に聞こえるのは、妻を危険から守るために脳がフル回転しているひとつの証拠だ。「話を聞いていない!」と思える夫ほど、じつは男としては優秀なのかもしれない。

■夫に話を聞かせるコツは?

 本書には、夫にイラッとしないための解決法が多数紹介されている。たとえば、「もっと私の話を聞いて!」と思うなら、下記の方法が有効だ。

(1)まず、視界に入る場所まで行って名前を呼ぶ
(2)2〜3秒間を待って本題に入る

(1)でゆっくりと話しかければ、言語入力のスイッチが入る。それからは早口になっても構わない。著者はこの語りかけ法によって、職場の男子部下たちからの信頼度を上げることができたそうだ。ちなみに、話を「結論」から話し始めるのも男性脳をつかむための鉄則だという。これもビジネスにも使えそうだ。

■男性脳は、知れば知るほど、不器用で、一途で、愛おしい

 夫に対してそんなにガマンを続けるなら1人のほうがラク…そう思った方には、ますます本書を読んでほしい。脳の周期性からいうと、夫婦が阿吽の呼吸になるまでに35年かかるそうだが、それだけの年数をかけて得る「かけがえのない存在」がどれだけ尊いことか。

 本書は「この人と一生を生きる」と決心した女性のために書かれており、著者自身の実体験も語られている。「THE 男性脳」でわからずやの夫と、それが反面教師となった(!?)できた息子。過去には離婚の危機もあったが、いつもは敵に回してきた「男性脳」が、2人の仲を取りなす役目を果たしてくれたそうだ。山ほど経験を積んだ夫婦にも甘酸っぱい瞬間ってあるんだな、と心温まるエピソードをぜひ読んでみてほしい。

 本書の解説は説得力があって読みやすく、描かれるストーリーに笑い泣きしながらすいすい読み進められるはずだ。ただし、中には本当に怠惰で邪悪な夫もいるそうで、そんな場合の対策も本書でしっかりと紹介されている。

 男性脳は、知れば知るほど、不器用で、一途で、愛おしい。私たちは夫に「濡れ衣」の怒りをぶつけていたようだ。男って、つらいのね…。「男性脳の使い方」さえマスターすれば、あなたの夫は意外と気の利く、優しい夫に変わるかもしれない。

文=吉田有希