京都人に裏表があるワケは? “日本一生徒数の多い”社会科講師が解き明かす47都道府県の魅力

社会

2019/11/8

『47都道府県の歴史と地理がわかる辞典』(伊藤賀一/幻冬舎)

 日本の地方行政区分の始まりは1300年以上前、飛鳥時代までさかのぼるのだそうだ。そのときから地方が生まれ、その地域だけの文化が根づいて育まれてきた。47都道府県は「日本の宝」と断言してもいい。

 『47都道府県の歴史と地理がわかる辞典』(伊藤賀一/幻冬舎)は、そんな47都道府県の魅力をぎゅっと1冊に凝縮した辞典だ。著者は、オンライン予備校「スタディサプリ」で「日本一生徒数の多い社会科講師」と名高い伊藤賀一先生。

 ここでもう少し伊藤先生の説明を加えておくと、30歳のとき、「講師なのに実体験が足りない自分と決別」するため、順調に積み上げた東進ハイスクールのキャリアを捨て、関東以西の各地を転々と旅した仰天の過去を持つ(本当は北海道や東北も行きたかったそうだが、結婚したため断念)。このとき経験したアルバイトは多数あり、なかには怪しげなものもあるとか…。

 とにかく社会科の講師としての知識と若い頃に無茶して得た圧倒的な実体験によって、本書の情報量はまさしく「辞典」と表現すべき密度を誇る。

 たとえば「気候」について。日本の気候は、主に北海道が亜寒帯、本州が温帯、沖縄が亜熱帯。学校の授業でこのように習ったはずだが、実は日本の意外な地域が「熱帯」に属することをご存じだろうか。それはなんと東京都にある。日本最南端の沖ノ鳥島がそうなのだ。まさか日本に灼熱の熱帯地域が存在するとは知らなかったので、本書を読んで思わず「へぇ~」と声が出てしまった。

 また富士山のイメージが強い静岡県は、関東圏と中京圏に挟まれ、交通の便が良く裕福な家庭が多いとか。したがって地方意識が薄く、都市部ほど「方言など存在しないぜ」という標準語意識があるという。また伊藤先生の個人的な評価によると、美人が多いそうだ。ふーん…ちょっと鼻につきますね…。さらに県の面積が7777㎞²と縁起のよい数字を叩きだしており、伊藤先生が「ラッキー県を強調してみては?」と提案している。

 東北の自然豊かな山形県は驚きの事実を有している。なんと日本で唯一、すべての市町村に温泉があるのだ。これには湧出量・源泉量ともに日本一位を誇る大分県も、冷や汗で温泉が冷めてしまうに違いない。上質な米と米沢牛、サクランボをはじめとする絶品果物など、特産品が光る山形県はもっと温泉アピールで観光客を呼び込むべきではないか。

 東海地方でありながら関西地方にも属する三重県は全国で唯一、パチンコ店の大晦日終夜営業を条例で認めているそうだ。これは伊勢神宮をはじめとする初詣客のトイレ確保のためだったのだが、今ではコンビニの登場で有名無実化してしまった。

 そして最後に我らが愛すべき京都府のあの話題にも触れておきたい。メディアが大々的に報じたせいで、京都人は「裏表がある」「腹を割らない」という奇妙なイメージがついてしまった。しかしこれにはれっきとした理由があることを知ってほしい。

 古くから日本中の人々が集まる京都では、直接的な表現を避け、それとなく相手をいたわる処世術が必須だった。つまりメディアが「京都人は裏表が~」なんて報じるたびに、京都人は内心で「なんでそれがわからはらへんのやろ。というかなんであんたに腹を割らんとあかんのやろ」と呆れていたのだ。今後、知ったかぶりを嫌う京都人の地雷を踏むようなマネはやめよう。

 このように本書は、私たちの知らない47都道府県の姿をぎゅっとつめこんでいる。本棚に飾ると、ふと無意識に手に取る魅惑があるので、旅行が好きな人はもちろん、受験を控えるお子さん向きでもある。教科書の代わりに家に置いてみてはいかがだろう。

 東京に人口が集中する一極集中と人口減少による過疎化が最近になって際立ってきた。しかしどんな時代になろうと日本人は地方が大好きな民族に違いない。出身地を愛し、知らない土地に足を運び、47都道府県の話題で盛り上がるだけの興味が誰にでもあるからだ。人口減少によってどれだけ47都道府県の存続が危ぶまれようが、日本人にとって都道府県制度が宝であることは、今後ずっと変わりないだろう。

文=いのうえゆきひろ(京都府出身)