ふしぎなことばと、やわらかなイラスト…川柳界の逸材×人気イラストレーターによる心のデトックス本

文芸・カルチャー

2019/11/9

『バームクーヘンでわたしは眠った』(柳本々々:句と文、安福望:絵/春陽堂書店)

 手にとった瞬間から、これは、宝物のような本だと思った。なんて上質に作られた本なのだろう。この本は、誰かへの贈り物にもふさわしいし、それよりもまず、自分自身が、そっと手元に置いておきたい。そう思わされたのは、『バームクーヘンでわたしは眠った』(柳本々々:句と文、安福望:絵/春陽堂書店)。第57回現代詩手帖賞受賞の詩人・川柳作家の柳本々々氏と、人気イラストレーターの安福望氏による絵日記のような1冊だ。

 この本は、2018年5月から1年間、毎日更新されたWEB連載「今日のもともと予報 ことばの風吹く」の中から、103句を厳選し、まとめられたもの。手にとった時から、本にこめられた、たくさんのこだわりに気づかされる。銀の星がちりばめられた茶色い表紙よりも一回り小さくかけられた白いカバー。そこには、エンボス加工が施され、凹凸のある独特の触感にあたたかみを感じる。中央には、本のタイトルの通り、大きなバームクーヘンのイラストが描かれ、その真ん中で人とクマがスヤスヤと眠り、2匹のヒツジがそれをどこかへと運んでいく…。

 ワクワクした気持ちで本をひらくと、書いた日の日付とともに、一つひとつのふしぎなことばとやわらかな水彩画のイラストが掲載されている。背表紙がなく、本がパッタリとひらくコデックス装は、まるで、日々の日記を束ねたような姿。見開きのイラストページもみやすく、あっという間に、読者は、詩とイラストの世界に吸い込まれてしまう。

 普段、詩や川柳をよく読むという人も、触れたことがないという人も、この本に描かれていることばの力には、圧倒されるに違いない。読めば読むほど、夢のなかにいるようなフワフワとした浮遊感を感じさせられる。ひらがなを多用して描写される世界は、時にやさしくもあり、時にものがなしくもある。癒されることもあれば、ドキッとさせられることもある。

 特に、孤独や寂しさを描いたページは、何度でも読み返したい。じっくりと詩を噛み締めて、ゆっくりとイラストを眺めると、心に切なさがじんわりと広がっていく。だが、切なさを感じると同時に、こう思うのは勝手なことなのかもしれないが、「自分と同じことを思っている人がいたのだ」と、理解されたような気持ちにもなるのだ。

 ひとりでいようが、誰かがそばにいようが、感じる孤独がある。その孤独をこの本は美しく描き出していく。包み込まれるようなあたたかさが、なんて心地よいのだろう。この本をひもとけば、胸のうちにあった不安が、すっと、消えていく気がする。この本を眠る前に読めば、一日の嫌だったことも、明日への憂鬱も忘れて、ぐっすりと眠りにつけそうな気がするのだ。

 この本は、心のデトックス本。心地よいことばと、かわいいイラストの世界に引き込まれていけば、いつの間にか、日々の疲れが癒されていく。あなたもこの本で、ちょっと一息ついてみませんか。もしかしたら、疲れているあの人への贈り物にもふさわしいかもしれない。

文=アサトーミナミ