ローマ教皇、38年ぶりの来日――“庶民派”教皇フランシスコが語る、幸福で充実した人生のヒント

文芸・カルチャー

公開日:2019/11/27

『「幸福」と「人生の意味」について』(教皇フランシスコ:著、安齋奈津子:訳/KADOKAWA)

 2019年11月23日、カトリックの最高指導者・ローマ教皇フランシスコが来日した。教皇(法王)の来日は、ヨハネ・パウロ2世以来、実に38年ぶりだ。教皇のオフィシャルグッズが相次ぎ売り切れとなるなど、大きな話題となった。バチカン史上初のイエズス会出身、初のラテン・アメリカ出身の教皇として注目を集めた教皇フランシスコは、中流家庭で育った“庶民派”の教皇としても知られている。そんな彼を理解するための手がかりとなるのが、『「幸福」と「人生の意味」について』(教皇フランシスコ:著、安齋奈津子:訳/KADOKAWA)。本書は、教皇フランシスコがさまざまな場所で発した言葉を、4つのテーマに沿って再編集したものだ。

人はだれでも、幸福になりたいという願望を抱いています。

 こんな言葉からはじまる本文は、第1部「意義ある人生を求めて」で人生を充実したものに切り替えるヒントが、第2部「あなたと他者」で人間関係のうちにある幸福が、第3部「受け取る報いが百倍に」では苦しみを乗り越え幸福に至るためのよすがが、第4部「祈る人は穏やかに生きる」では教皇フランシスコの具体的な祈りが語られる。「ローマ教皇の言葉」というと、カトリックの教えに触れたことがない人、教会に行ったことさえない人には、理解できるだろうかと不安になるだろうが、その心配は無用だ。たとえば、第1部に掲載された「お告げの祈り」には、こんなメッセージを見ることができる。

勇気が必要なのは闘うためであり、必ずしも勝つためではありません。(中略)勇気が必要なのは、意見をまくしたてて攻撃的になることなく、別の道を見つけるためです。(中略)心を開くためには、勇気が必要です。懐疑的になることにさからい、しかし傲慢にならないためには、勇気が必要です。

 なんとなく同調圧力の漂う職場や学校に疲れ、ひとりSNSをのぞいてみれば、圧倒的な“正しさ”が誰かを痛めつけている。「なにかがおかしい」とは思いながら、どうすることもできずにいる──そんな現実を生きる人ならば、キリスト教の信者ではないとしても、胸に響く言葉ではないか。

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 自身もイタリア移民の子であり、世界を揺るがす難民・移民問題に積極的に寄り添う教皇フランシスコは、「教会は野戦病院であれ」と──つまり、教会とは、「敵、味方の区別なく、傷ついた者に手を差し伸べ」る場所でなくてはならないと呼びかけた。それはおそらく、教えや考えを異にする者、生きる国や時代が違う者に対しても、変わらない彼の態度だ。教皇フランシスコは言う、「相違は調和、喜び、平和の道を妨げません。それどころか、たがいをもっとよく知り、理解を深める機会をもたらします」。たとえ辱められたときでも、決して弱まることのない思いやりこそが、平和な心や喜びといった大きな報いにつながるものなのだと。

「幸福」と「人生の意味」を探しながら立ちすくむ人に、癒しと力を与えてくれる至高の講話集。迷い、悩みがちな現代社会を生きるわたしたちの、道しるべとなりうる一冊だ。

文=三田ゆき