閉鎖された島で拡大する、“得体の知れない化物”による恐怖。ホラーマンガ好きも震え上がるグロ描写の連続にゾクッ!

マンガ

公開日:2019/12/17

『狂蝕人種』(室井まさね/竹書房)

『狂蝕人種』(室井まさね/竹書房)の主人公、風戸(かざと)は中学時代の同級生6人でガイナ共和国・ボルカ島を訪れていた。学生時代に片思いしていた木高美紗(こだか・みさ)が参加していることもあり、風戸にとっては懐かしさとドキドキ感が詰まった束の間のバカンスだ。しかし、そんな楽しい時間はあっという間に終わりを告げる。“なにか”を轢いた衝撃音と車に飛び散った大量の血しぶきと共に――。

 自動車事故を起こした風戸たちの前に現れたのは、ガスマスクや銃を装備した特殊部隊。屈強な男たちに有無を言わさず施設に連行された6人は、隔離室での拘束を余儀なくされる。「人権侵害よ」「警察じゃないよな、アイツら」「私たちが轢いたアレ、なんだったんだろ」、それぞれの不安と緊張がピークに達するなか尋問と採血が進められていくのだった。

 一方、施設内の別のフロアでは特殊部隊を統率する女所長の指示のもと風戸たちが轢いた生き物の解剖が行われていた。胃の内容物は黒人の腕を含む、複数の人間の残骸。化物がなにを食べていたかは明白だった。誰もが恐怖を覚えるなか、解剖をしている男のメスが突然止まる。粉々になるまで分断された化物の眼がギロリと動き、男の腕をビキビキと噛みちぎったのだ。所長は瞬時に解剖の中止とオペ室の封鎖を命令し、オゾン注入や焼却による死滅を図るのだった。

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 本作は、正体不明の生き物の暴走を描いた戦慄のパニックホラー。銃で撃っても、炎で焼き尽くしても、肉体を切断してもまったく効果のない“最強の化物”への恐怖が圧倒的な画力で描かれている。魅力はなんといってもページいっぱいに描かれるグロテスクな表現の数々。化物に絞め殺された瞬間に眼球が飛び出す「ミリッ」「ブチュッ」という弾ける音、化物がドロリと溶ける様子、化物のウイルスに感染した男の浮き出た血管など……ホラーマンガ好きすらも震え上がらせる演出が凝らされている。

 化物の正体を掴むカギとなるのは、施設の研究員として働いていたエド・サルコ博士。なんと彼のDNAと風戸たちが轢いた化物のDNAが一致していたのだ。なぜ化物は生まれてしまったのか。そして化物を倒し、閉鎖された島から脱出することはできるのだろうか。恐る恐る読み進めていくと、自分自身も島に閉じ込められた一人であるかのような感覚を覚える。ぜひバカンスに参加した“7人目”のメンバーとして、風戸たちと共に恐怖の時間を体感してみてほしい。

文=山本杏奈