5割以上が睡眠障害を併発している報告がある? ADHDを抱える人が仕事や対人関係に悩んだときの正しい対処法

ビジネス

更新日:2019/12/25

職場の発達障害 ADHD編 (健康ライブラリー)

監修:
出版社:
講談社
発売日:
『職場の発達障害 ADHD編』(太田晴久:監修/講談社)

 発達障害という言葉が一般に広まったことで、自分の抱える生きづらさの原因がADHDであることに気づく人が増えている。ADHDとは発達障害の1つで、正式名称は「注意欠如・多動症」という。

 ADHDの特性は大きく3つ。まず、落ち着きがない、失言を繰り返す、何かを待つことができない、といった「多動性」と「衝動性」。そして、忘れ物が多い、約束に間に合わない、注意散漫で満足に作業を果たせない、片づけができない、といった「不注意」だ。

 組織の一員として役割を果たす社会人になると、こういった症状は生きづらさにつながり、職場で不協和を生みやすい。発達障害は「治る病気ではない」ので、根性論的努力や周囲の叱咤激励では改善の見込みが薄い。そのうち自信喪失によるうつ病などの精神疾患を患うことがある。発達障害を抱える人に起こりがちな「二次障害」だ。

 もし思い当たるところがあるならば、『職場の発達障害 ADHD編』(太田晴久:監修/講談社)を読んで、少しでも自身の負担を軽くしてほしい。

 本書では、ADHDを抱える人が困難に苦しむ「仕事」「対人関係」「自己管理」の3つに焦点を当て、それらが改善する対処法を解説する。図解やイラスト付きで分かりやすいので、本を読むのが苦手な人も安心だ。本稿ではその一部を引用して紹介するので、頑張りすぎて心が折れる前に、ぜひ参考にしてほしい。

■【仕事】上司の指示を忘れてしまうときは「記憶の外付け」に頼ろう

 口頭で受けた指示(情報)を脳にとどめ、デスクに戻って、これまでやっていた作業と調整するといったような、短期記憶のことを「ワーキングメモリ」という。ADHDを抱える人が、上司からの指示を忘れてしまいがちなのは、ワーキングメモリの弱さが原因だ。

 この機能が弱いと、情報の処理効率が悪くなったり、特定の対象に向けた注意を一定時間保つのが難しかったりする。そこでワーキングメモリの弱さをカバーするため、メモ帳やスマホなどの外部記憶に頼ってみよう。「記憶を外付け」することで、上司からの指示を忘れるミスを防げるかもしれない。

 本書では、「TODOリスト」を作成することもオススメしている。自身のやるべきことが「見える化」するので、仕事や約束を忘れるミスが減る。さらにリストを持っていることが「安心につながる」というメリットもある。ポイントは、何度も自分で見直したくなるような「魅力的なリスト」を作成すること。詳しく知りたい人は本書を手に取ってみよう。

■【仕事】物の管理に苦労するなら量を減らして定位置を定めよう

 物の管理に苦労するのもADHDの特性だ。管理に苦労しないためにも、まずはデスクまわりの必要ないものを処分しよう。職場に関係ないものがあるなら、それは確実に必要ない。不注意にもつながるので、処分するか家に持って帰ろう。それでも「どれが必要かわからない」ならば、信頼できる人に相談だ。

 必要なものだけ残したら、次は定位置を決めよう。それぞれの定位置に分かりやすくラベルを貼っておくと、物の管理が楽になる。やってはいけないのが、デスクで物を探すとき、「どこにいった?」と様々なものを持ち上げて別の場所に移動させること。これでは見つからないどころか、どんどん散らかっていく。どんなに探しものがあっても、持ち上げたものは必ず同じ場所に置くことが大切だ。

 さらに書類の管理をするときは、A4サイズの紙が入る3つの箱を用意して、「いる」「いらない」「保留」に分類しよう。

「いる」に分類した書類は、クリアファイルを用意して個別に管理だ。クリアファイルの背中側に付せんなどの大きなラベルを貼りつけて、中身がはっきり分かるよう工夫すると安心だ。作業別に色分けしてもOK。

「保留」に分類したものは、1カ月間など一定期間を置いて、改めて「いる」「いらない」を判断しよう。

■【対人関係】余計な一言や衝動的な怒りを抑える方法

 ADHDを抱える人は、自身の「余計な一言」に悩む傾向にある。どうしても失言してはいけない場所に行くときは、思い切って「黙って過ごす」のも1つの手。このとき不愛想に過ごしていると相手に悪い印象を与えるので、できるだけニコニコしておこう。腕を組むなど、威圧的な印象を与えないことも心がけたい。会議など発言が必要な場所ならば、あらかじめ発言したい内容を紙に書いて整理する方法もある。

 衝動的にわく怒りが抑えられなくて困っている人は、怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」を実践してみよう。深呼吸する、水を飲む、数をゆっくり数える、顔を洗う、「私は大丈夫」などのおまじないの言葉を言う、といった方法がある。

 それでも怒ってしまったときは、すぐに謝ること。そして「Iメッセージ」で自分の気持ちを伝えてみよう。

「そんな言い方しなくてもいいんじゃないですか!」

「私は、そのようなご指摘を受け、残念に思いました」

「私は」を主語にすると波風立てず、自身が怒ってしまったことを伝えることができる。

■【自己管理】5割以上が睡眠障害を併発している報告がある

 ADHDを抱える人のうち、5割以上が睡眠障害を併発している報告があるという。特に“昼間の眠気”に苦労するケースが多く、職場での居眠りに悩む人がいる。これは体内時計がずれていて、「睡眠―覚醒」のリズムが狂ってしまうせいだそうだ。

 さらに時間感覚が弱い傾向もあるので、好きなものに没頭しすぎて生活リズムが狂ってしまい、そのせいで寝不足を引き起こしているケースもある。対策としては、食事や寝る時間を決めて、アラームを活用して順守すること。特に食事と起床時間は生活リズムの基本なので絶対に守ろう。

 スマホアプリやSNSは、興味や関心が次々にうつるよう設計されているので、ADHDの人ほどのめりこみがちだ。睡眠不足はもちろん依存症にもなりかねないので、寝る前に見るのは厳禁だ。

 また周りの音が気になって眠れない人は、騒音を消すためにかぶせる音や単調で耳に障らない音、ホワイトノイズを流して入眠を促そう。それでも睡眠不足で生活に支障が出るときは、薬物療法も選択の1つとなる。

 ここまでご紹介した内容は本書のごく一部だ。繰り返すが、発達障害は治る病気ではないので、精神論や根性論で改善しようとしても、本人が疲弊するだけ。ぜひ本書を読んで正しい対策を行い、職場の同僚や家族といった周囲の人々も「サポートの必要性」を理解しよう。

文=いのうえゆきひろ

この記事で紹介した書籍ほか

職場の発達障害 ADHD編 (健康ライブラリー)

監修:
出版社:
講談社
発売日:
ISBN:
9784065177495