「とんでもない才能!」 『大浮世絵展』開催中に読んでほしい、デビュー作が話題沸騰の江戸BL『べな』

マンガ

公開日:2019/12/28

『べな』(こふで/双葉社)

 綺羅星の如く輝く5人の人気浮世絵師の代表作が結集した『大浮世絵展』が江戸東京博物館で開催中だ。歌麿の美人画、写楽の役者絵、北斎・広重の風景画、国芳の戯画など、各絵師の得意ジャンルにしぼって人気作を取り揃え、2020年5月までの半年間、東京、福岡、愛知を巡回する。浮世絵は江戸時代に成立した絵画のジャンルだが、北斎の『富嶽三十六景』が新千円札やパスポートの新デザインに採用されるなど、現在もその文化は私たちの生活に溶け込んでいて、『大浮世絵展』も連日にぎわいを見せている。そんなすばらしい浮世絵に触れられる今、江戸に思いを馳せながら、ぜひ読んでほしい作品がある。江戸を舞台にしたマンガ『べな』(こふで/双葉社)だ。

(C)こふで/双葉社

 作品の舞台は江戸で、「べな」は鬼の子の名前である。著者こふでのデビュー作ながら、「とんでもない才能」「全ページが尊い」「画力もお話も完成度が高すぎる」など熱い感想が殺到している注目作で、ボーイズラブ作品になじみがない人にも、おもしろい物語としてぜひ読んでみることをおすすめしたい。

(C)こふで/双葉社

 物語は、江戸・両国の見世物小屋からはじまる。壱は若頭のダンゾウに抱かれることで病気がちな双子の弟を守ってきたが、ついに弟は死に、“双子”としても売り物にならなくなってしまう。そこで小屋で飼われている怪物の世話をまかされるが、怪物は人間の子どもにしか見えず、少年をべなと名付け、親元に返そうと見世物小屋からともに逃げ出す。2人は下町の長屋に住む人情に厚い夫婦に助けられ、べなは手習い所に通い言葉を覚えるなど成長していき、やがて壱への恋心を自覚するように――。

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(C)こふで/双葉社

 べなの鬼としての目覚めと逃亡、壱が抱える弟の死への悔恨、追手として現れるダンゾウ。物語が大きく展開する中で、壱の知らなかった真実が明らかになり、彼らはそれぞれ、止まっていた時間を進め、一歩踏み出すことを決意する。見世物小屋での絶望から、下町の人々との交流による癒やし、成長を経て、物語は冒頭から想像がつかないほどの大団円を迎える。終わってみれば、ただただ、しあわせな愛の物語がそこにある。

 著者はツイッターでこう書いた。

 ラストでべなは、壱を「心が追いつかないほど」しあわせにするいい男ぶりを発揮する。著者は新人離れした力量で、思惑通り、べなの見事な成長を描ききった。安定した高い画力で、着物などのコスチュームや江戸の風景も書き込まれ、当時の風俗知識も散りばめられた傑作江戸BL『べな』。ぜひ今、このタイミングで、『大浮世絵展』とともに、楽しんでみてほしい。

(C)こふで/双葉社

文=はたのくみ

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