「発達障害」のある人は働くうえで、一体どんなことに困っている?

ビジネス

公開日:2020/1/18

『まんがでわかる 発達障害の人のためのお仕事スキル 楽しく働くためのヒント&セルフアドボカシー』(鈴木慶太:監修、株式会社Kaien:編著/合同出版)

 発達障害のある人は、仕事において一般的に「コミュニケーションが苦手」「ミスが多い」などの困りごとがあると言われてきた。確かにそういった面もあるが、問題はもっと具体的で、人によってバラバラだ。

『まんがでわかる 発達障害の人のためのお仕事スキル 楽しく働くためのヒント&セルフアドボカシー』(鈴木慶太:監修、株式会社Kaien:編著/合同出版)では、“発達障害応援企業”として当事者の支援を行なっているKaien社によって、実践的なケーススタディがまとめられている。

 例えば、「急に頼まれた仕事に対応できない」という困りごとがある。

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「作業がゆっくり」「段取りを決めるのが苦手」といった特性が影響し、この困りごとが発生しているそうだ。解決策は「急に頼まれた仕事にすぐに対応せず、まずは優先順位と段取りを確認する」「急な依頼に対応できるよう、バッファーを持っておく」などが挙げられている。

 本書では、このように困りごとがマンガで描かれていてわかりやすい。困りごとが生じる場面、そして原因と分析、さらに対策まで書かれているので、当事者だけでなく、職場の同僚や上司、支援者、さらには発達障害のある子どもを育てる親御さんも共通のビジョンを描けるだろう。

 他には「求められていることと異なる仕事をやってしまう」という困りごとが挙げられる。

「業務指示の認識がズレる」「ニュアンスを読みとるのが難しい」といった特性により、後から「えぇ!?」と驚いてしまう事態が発生するそうだ。この場合、いわゆる「報連相」の中でも、特に「中間報告」が推奨されている。作業計画を立てた段階や最初の工程が終わった時点で報告し、チェックしてもらうことで、ズレを減らしていくことができる。

 ちなみに書籍のタイトルにある「セルフアドボカシー」とは、自分の状態を把握し、必要な支援を要請することを指す。この際、一方的に権利を主張するのではなく、穏やかに交渉する力が必要だという。“権利を主張する側(当事者)も、その主張を聞いて受け入れる側(事業者)も、しばらくの間は練習が必要”と言う。

“みんながハッピーに働くことは、結果的に、職場のパフォーマンスを上げることにつながります”

 本書はもしかすると、発達障害のある人に限らずとも有用な一冊になっているのではないだろうか。職場に一冊、置いておきたい本だ。

文=えんどーこーた