大金を手にした元自殺志願者たちを待ち受けていた運命とは…映像化間違いなしの大どんでん返しミステリー

文芸・カルチャー

2020/1/20

『OJOGIWA』(藤崎翔/ポプラ社)

 情緒の安定・不安定は、金の有無に起因するのだろうか。すべての例でそうだとはいえないが、金があるかどうかが、生きる気力に強い影響を及ぼしているように思えてならない。お金があるだけで前向きな気分になれるのはきっと私だけではないはず。世の中金がすべてなのか。金さえあれば、どんな問題も解決できてしまうのだろうか。

『OJOGIWA』(ポプラ社)は、4人の自殺志願者が大金を手に入れたことにより始まる衝撃のミステリー。作者の藤崎翔氏は、『神様の裏の顔』で横溝正史ミステリ大賞を受賞したことをきっかけにデビュー、既刊『おしい刑事』は風間俊介主演でテレビドラマ化されたことでも知られる人物だ。きっと、いつの日か、最新作『OJOGIWA』も映像化されるのだろう。そう思わされるほど、この本では、映像でも見てみたいような、スリリングな展開が続いていく。

 主人公は、ネットで知り合い、それぞれの事情から練炭による自殺を画策する4人の男女。「オーバー」「粗大ゴミ」「化け猫」「失敗作」と、ハンドルネームで呼び合う彼らは、ワゴン車の車内で炭に火がつけられた時、銃撃事件を偶然目撃する。撃たれて倒れる男、銃を放り出して逃走する犯人。4人は戦慄するが、男の側に大量の札束が転がっているのを見た瞬間、邪な気持ちが芽生える。

「私、1,500万持っていくから。残りの1,500万を3人で分ければ? 一人500万ずつ」。借金を苦に自殺しようとしていた「オーバー」は、銃を拾い上げると、他の自殺志願者たちを脅し、自殺志願者たちは「オーバー」の言うままに大金を分けることになる。自殺を中止し、大金を分け合う4人。しかし、金の持ち主が堅気であるわけがない。彼らの取った行動が、想像を絶する恐怖の扉を開けてしまうことになるのだ…。

「もし、自分が大金を手にしたならば、どんな風に使うだろうか」。そんな想像をめぐらせながら、読者は“四者四様”の金の使いかたや、その後の彼らの人生を見ていくことになる。

 たとえば、高校時代、親友を誘って始めた仮想通貨で大損し、親友から絶交されてしまった「化け猫」は、基礎から投資を学び、500万円を1400万円まで増やすことに成功する。そして、親友に謝罪の思いを込めて700万円をプレゼントするのだ。金で親友との仲を取り戻すことはできるのか。4人の自殺志願者たちは、死ぬつもりだったはずなのに、大金を手にした途端、生きる希望を見つけ始める。そんな姿が、面白くもあり、なんだか切なくもある。

 特に、この作品の魅力は、クライマックスにかけた大どんでん返しにあるだろう。前半のストーリーからは予想できない展開に「してやられた」となんだか悔しい気持ちにさせられた。読み終えたら、また一から読み返さずにはいられない。ああ、ネタバレになってしまうので何も言えないのが歯がゆい。あっと驚かされるこの感覚を、はやくいろんな人と共有したい。

 大金をめぐる物語はどう加速していくのか。あなたはこの作品に騙されずにいられるだろうか。この本はミステリー愛好家必読の書。映像化間違いなしの大どんでん返しミステリーをぜひともあなたも体験してみてほしい。

文=アサトーミナミ