イケメンわんこ准教授×嘘を聞き分ける大学生が、民俗学の知識で怪事件を解決! 『准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき』

文芸・カルチャー

2020/2/20

※「ライトに文芸はじめませんか? 2020年 レビューキャンペーン」対象作品

『准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき』(澤村御影/角川文庫/KADOKAWA)

 嘘発見器があればいいのに、と思うことがある。たとえば食事の席、「これ以上太ったらヤバい」と感じていても、友達は「ぜんぜん太ってないから大丈夫!」。いや、ホントか? なんとなくモヤモヤしたときは、ぜひ『准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき』(澤村御影/角川文庫/KADOKAWA)を手に取ってみてほしい。

 主人公・深町尚哉は、この春、大学1年生になったばかり。講義要綱に載っていた民俗学の講義の説明には、おもしろいことが書かれていた。「学校の怪談や都市伝説等から、民俗学というものについて幅広くアプローチする」。担当は高槻彰良、民俗学の准教授。初回の授業に出てみたところ、高槻は、英国風のスーツをまとったどイケメンだった。だが尚哉にとって、彼の容姿は問題ではない。「はい、こんにちは」。彼が教壇に立って発した第一声は、驚くほどまっすぐに尚哉の耳に届いたのだ──尚哉にとって、歪みだらけの不協和音でしかない、教室の喧騒の中で。

 実は尚哉の耳は、人のつく嘘を声の歪みとして知覚する。しかし、歪んだ声を聞くことは不快でしかない。おまけに人は、簡単に嘘をつく。嫌なものを聞きたくなければ、音楽プレーヤーから伸びるイヤホンを耳に突っ込み、他人と距離を置くしかなかった。

 そんなふうに孤独な生活を送っていた尚哉だが、ある日の民俗学の講義の終わり、高槻に呼び止められた。高槻は、研究のために怪事件を収集しているそうだ。レポートにも「不思議な話」を書けば加点するとのことだったが、高槻は、尚哉が書いた体験談に興味を持ったらしいのだ。

 尚哉がレポートに書いたのは、幼いころ迷い込んだ奇妙なお祭りの話。それ以来、尚哉は嘘を聞き分けられるようになったのだが、正直に話したところで信じてもらえるはずがない。尚哉は、話を聞きたいという高槻の真意を探ろうとするけれど、彼はあくまでまっすぐな声で、怪異を収集している理由を語る。

「……全部本当だとは思ってないよ、さすがにね」
 高槻はココアのカップを両手で包むようにして、そう答えた。
「講義で話したように、多くの話には、それが語られるようになった背景がある。何らかの戒めや教訓のため、あるいは説明のつかない事柄に説明をつけるため。つまり、作られた話ばかりということだ。──でもね、もしかしたら、中には本物もあるかもしれないでしょう」
「……本物って」
「本物の怪異に遭った人による体験談。あるいはその伝聞。……僕が知りたいのは、はたしてこの世に本物の怪異は存在するのかってことだよ(後略)」

 高槻に気に入られた尚哉は、彼の助手として怪事件の調査に乗り出すことに。幽霊物件や呪いの藁人形事件、神隠しの真相を探るうちに、尚哉はどこか人間離れした高槻の秘密についても知ることになるのだが…?

 准教授・高槻彰良いわく、怪異として表出している「物語」は、「真実」であるとは限らない。語られたことをそのまま受け取るだけでなく、もう一歩踏み込んでみることができたなら、また違ったものが見えてくる可能性がある。

『憧れの作家は人間じゃありませんでした』(角川文庫/KADOKAWA)で角川文庫キャラクター小説大賞《大賞》を受賞しデビューした著者の、大人気シリーズ第1弾。現在第3巻まで発売中だ。ちょっと残念な大型わんこ系准教授と、地味メガネ大学生のコンビは、わたしたちにもう少しだけ他人や世界に踏み込んでいく勇気をくれることだろう。

文=三田ゆき

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