職業、「死神」!? 死者の未練を晴らす少年少女の青春ストーリーを読書メーターユーザーはどう読んだのか

文芸・カルチャー

公開日:2020/2/21

※「ライトに文芸はじめませんか? 2020年 レビューキャンペーン」対象作品

『時給三〇〇円の死神』(藤まる/双葉社)

 累計15万部突破。『時給三〇〇円の死神』(双葉社)が今話題を呼んでいる。作者は、『明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。』で第19回電撃小説大賞金賞を受賞したことで知られる藤まる氏。死者たちのこの世への未練と、心に秘めた願い。あなたはこの青春ストーリーを涙なしに読むことができるだろうか。

 主人公は、男子高校生の佐倉真司。彼はある日、同級生の花森雪希から「死神」のアルバイトに誘われる。彼女曰く「死神」の仕事とは、成仏できずにこの世に残る、死者の未練を晴らし、あの世へと見送ること。死ぬ前の猶予期間「ロスタイム」を過ごす死者に、佐倉は「死神」として寄り添うことになる。

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 この作品を読んだ読書家たちは、読書メーターにこんな感想を投稿している。

幽霊が未練を晴らして切なくも晴れやかに成仏する、死神が出てくる話ではよくあるタイプなんだろうなと思っていたら……。死者の未練や不幸の度合いがリアルで重い。でも、だからこそ、それでももがく主人公の姿に、人生どん底な主人公が生きる希望を持てたことに、説得力が生まれているんだと思う。(bluets8

この世に未練を残す「死者」をあの世へと見送る「死神」のバイトを始める佐倉が様々な想いの形に触れ、傷つきながらも気づいて向き合っていくお話。分かりやすいハッピーエンドではないかもしれないけれど、一輪だけ咲いていた幸せの花がどこか救いにも感じました。(ギンちゃん

何度絶望しても、それでも一筋の光を見出して何かに抗い続ける主人公。彼が頑張れるのは、いつだって大切な人のためでした。記憶も何もかもが残らない世界で、バトンのようにして渡される時給三〇〇円の物語。不思議な感動を覚えつつ、そっと読了です。(amethyst@読書

最初は軽いノリで読んでいたのですが、第1章から驚きの展開に。そして章が進む毎にこれでもかっ?!と畳み掛ける展開。そして、最終章では想像も出来ない「えっ!!」と言う願い事を。章毎に主人公の願い事や今後の展開を想像しながら読めば楽しさが広がります。(如水

死者が過ごすロスタイムはパラレルワールドのようで、ある意味残酷だが、自分自身を見つめ直す時間も大切なんだろうと思えた。「残酷な世界に一握りの優しさが溢れれば、きっと世界はすてきになる」そんな優しい気持ちになって読了。(みなみ

現実でも死神と共に少しでも自分の後悔や未練に折り合いをつけこの世を去ることができる時間があればいいのになと感じた。死者の抱える未練は重く辛いものばかりで、死神の願う形で死者をあの世に送ることが出来ないもどかしさがあり、決してハッピーエンドとは言えないけど、この作品なりの前向きで爽やかなラストに気持ちの良い読後感が得られた。(saki

最初は残酷だと思っていたロスタイムも考えようによってはその人にかけがえのない時間を与えてくれているように思いました。そして花森と佐倉の二人が出会えたことは本当に良かったと感じました。たとえ記憶を失ったとしても、すべてが無かった事になるわけではないという考えは大事だ。(ebi kan

綺麗な物語ではなく、苦しさとその中に少しの救いがある物語。救われるのは、主人公の佐倉くんと一緒に死者の未練をはらしている、花森雪希という女の子が明るくて楽しい雰囲気にしてくれてるとこ。だけど彼女にも秘密があって。全てを知った時に初めから読み返したくなる物語です。(沙耶

「死神」の仕事を通じ成長していく佐倉くん。「死神」のパートナーが花森さんだったことにもきちんと意味があった。佐倉くんは人の痛みがよくわかりとても優しい人だからこそ救えたのかな。でも同じ様に佐倉くんも救われたのかな。とても切なく、とても重たく、胸が苦しくなる様な時もあったけれど、最後は温かく優しい気持ちをもらいました。(mikan

 初恋相手の幼馴染、出産直後の母親、虐待を受けた子ども…。絶望の中で亡くなった死者との交流を通じて、佐倉が見つけ出したものとは何なのか。切なすぎる死者との対話に、感動に包まれること間違いなしのあたたかい物語を、ぜひともあなたも読んでみてほしい。

文=アサトーミナミ

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