時代を超えて伝わる落語はやっぱりおもしろい! 頭の毛をそって頭をひやす? 親子でズッコケるらくごえほん『ごんべえだぬき』

文芸・カルチャー

2020/2/28

『らくごえほん ごんべえだぬき』(川端誠:作・絵/KADOKAWA)

「らくごえほん」は、長く愛される落語の名作を、かわいい絵とわかりやすい文章で伝えるシリーズ。大の落語好きの著者・川端誠さんが数多のなかから絵本にあう噺を選んでいるため、落語をまったく知らなくてもOK。落語だからと難しく構える必要なしの絵本です。

 第1弾の『らくごえほん てんしき』(川端誠:作・絵/KADOKAWA)は、「転失気(てんしき)」が“おなら”のことだと知らない和尚さんがとんちんかんな知ったかぶりをする、大人の滑稽さを描いたお話。“おなら”好きの子どもたちにはぜひ読んでほしい! と感じた絵本です。筆者自身も「てんしき」を知らずに興味深く読んでいると、他にも「てんしき」を知らない家族が「なになに?」と輪に入ってきて、家族みんなで囲んで読みました。時代を超えて伝わる落語にはやはり、人を引き寄せる魅力があるなと感じたものです。

 小坊主がいたずらで和尚さんをだますところにスカッとし、落語には必ずオチがあるので、子どもも読み応えを感じたようです。子どもにもわかりやすくて笑える著者オリジナルのオチだったため、親子で本当にズコーーとなりました。そんな絵本ははじめてで、これはクセになりそうだと思っていたら…。

 このたび、第2弾『らくごえほん ごんべえだぬき』(川端誠:作・絵/KADOKAWA)が刊行されました。今度は、いたずらが大好きな子だぬきの頭をひやして山に帰す、というお話。愛らしい子だぬきの行動にまたまたズッコケることになりそうです。

 ある日、ごんべえさんの家に近所の若者があつまって酒盛りをしていたら、その声をききつけて山からおりてきたものがいました。若者たちが帰ったあと、「ドン、ドン、ごんべえ」「ドン、ドン、ごんべえ」と戸をたたく音がしたので出てみると、誰もいない。戸を閉めて布団にはいると、今度は「ごんべえ」「ごんすけ」「ごんたれ」という声が。「ははぁ、たぬきだな」とごんべえさんはきがつきます。子だぬきはその後も、「ごんちきちん」「ごんたれぷー」と、悪ふざけをして遊んでいます。

 かなり迷惑ないたずらだぬきですが、読んでいるうちに愛着がわいてくるから不思議。「ドン、ドン、ごんべえ」といたずらしていたら、どんどん楽しくなってきちゃった…そんな表情がたまらなくかわいくてクスッと笑えるからだと思います。

「ごんべえ」と何度も呼びかけるので、繰り返しが大好きな子どもは、どんどん可笑しくなってきます。「ごんべえ」「ごんべえ」「ごんすけ」のあたりで「あれ? もしかしてまだ続く?」という顔になったと思えば、「ごんごん」のあたりでは完全に「いひひひ…」とお腹を抱えて。自分なりに「ごんごごんごご」などと適当な呼び名を加えて言葉遊びを楽しむこともあり、こうなったらもう親子で笑いが止まりません!

 その後、ごんべえさんは子だぬきをつかまえ、こらしめるために縄でしばっておきました。翌朝、若者たちが「今晩はたぬき汁」「毛皮はオラがもらう」と盛り上がるものだから、子だぬきは真っ青。でも、ごんべえさんはたぬき汁にはしませんでした。「これで頭をひやせ」と子だぬきの頭をショリショリとそり、山へ帰してやります。すると、その日の夕方に今度は「ごんべえさん」と戸をたたく声がして…。

 ここでは、頭をそられるたぬきの表情の変化に注目するだけでも笑えてきます。すっきりとした笑顔は本当にうれしそうで、頭も十分にひえたことでしょう…! これで味を占めたのか、たぬきは再びごんべえさんの前に現れ、ある言葉を投げかけます。ここが、この噺のオチでありズッコケポイントです。

 さらに本書では、オチのアンサーともいえる「オチのオチ」が裏表紙で表現されています。その先の物語を想像して楽しくなるような裏表紙は、どうぞ実物でご確認を!

 落語の世界に自然とふれることができる本シリーズ。第1弾の『てんしき』では、この本をきっかけに子どもが落語にはまったという声もありました。落語には、その時代の暮らしぶりや人間模様、人の滑稽さや言葉遊びなど、普遍的で豊かな表現がたくさんあるのだと感じます。そこから子どもが何を受け取り、何を発展させていくのか、子どもたちにはぜひ体験してもらいたいと感じました。

文=麻布たぬ