「二股、三股かけてみませんか?」西原理恵子が大学生に語る、女性が「主体的」に生きる大切さ

暮らし

2020/2/29

『最後の講義 完全版 西原理恵子
西原理恵子/主婦の友社)

 近年、世界を駆け巡った#MeToo旋風。セクハラに無自覚だった男性たちが戦々恐々とする一方で、多くの先輩女性たちが、かつて自分も被害にあっていながら声をあげられなかった後悔を口にした。「なんで? 関係ないじゃん」とピンとこない若者もいたかもしれないが、実は時代は先人たちの奮闘が作り出すものであり、ことに女性たちを取り巻く世界にはそんな面がある。今や常識の「育児休暇」だって、それこそ先人女性が頑張って働き続けたからこそ実現した面だってあるのだ。だからこそセクハラに声をあげられなかった先輩は自分を悔やんだ。そして後輩の奮闘にエールを送ったのだ。

 というわけで若き女性たちへ。先輩女性の生き方というのは、実は「今の自分」の生き方にも繋がっているし、そんな先輩の体験はこれからを生きる上でも参考になるもの。たとえば漫画家・西原理恵子さんの言葉など、かなり直球で心に響くだろう。NHKの番組で「もし、今日が最後だとしたら、何を語るか」をテーマに西原さんが東京女子大で講義した内容を再編集した『最後の講義 完全版 西原理恵子』(主婦の友社)には、正直「ここまで言うか!」と同年代の女性たちが思うほどの「本音」が溢れている。

 前提として西原さんの人生はいわゆる「普通」ではない。生まれ育った高知の漁師町はDVが日常風景で、そこから逃れるために東京の美大に進学。絵を描くことを仕事にしたいものの、自分の才能の限界を早くから自覚してエロ漫画界に進出。アル中でDVの夫との間に2児をもうけ離婚…決してラクな人生ではないのはこれだけでもわかるだろう。だがそんな彼女だからこそ、「こういうときは逃げたほうがいい」「こういう場合はさっさとやめたほうがいい」とアラームの感知力は人一倍。これからぶつかるいろんな壁に対して「真っ正面からいかなくていい」とサイバラ流の抜け道を示してくれるのだ。

 たとえば学生時代、無職の男と同棲して家をゴミ屋敷にされてしまった西原さんは、仕事でお金を得て引っ越しし同時に男も捨てた。その経験から「働かない男とダラダラ時間を捨てる」ことは若い女性が一番やってはいけないし、「別れるにもお金がいる。だから必ず仕事と貯金を!」と訴える(かつてNHKの「クローズアップ現代」でも言い放った「“男”捨離のダンは男のダン」の名言も健在だ)。さらにひとりの男に期待しすぎず、二股、三股かける「マイルドやりまん」を推奨するなど、サイバラ節が炸裂。是非はともかく、こうした本音を女子大の講義で投げかける姿勢にむしろ彼女の「本気」をみる。

 そして全編を通じて西原さんが強く訴えるのは、女子が「主体的」に生きることの大切さ。結婚や子育てなど自分以外の誰かのために振り回されがちな女の人生だからこそ、常に自分を大切に、自分本位で生きろ! と強く背中を押してくれるのだ。

 ちなみに、もし本書を手に取ったあなたに大学生くらいの娘がいるなら、ぜひ娘さんと共有してほしい。親が伝えられない本音をザクザク言ってくれるのもありがたいし、本をきっかけに「ひとりの先輩女性」としてのあなたの生き方や考え方を伝えられたらもっといい。それが新しい女同士の関係を生むことだろう。案外「なくしたのはウエストだけ」「お腹の肉はチャンピオンベルト」と言い切ってくれる西原さんに、あなた自身が励まされるかもしれないが。

文=荒井理恵