電撃小説大賞 注目の2作品を大解剖‼ ~『そして、遺骸が嘶く ―死者たちの手紙―』~

小説・エッセイ

公開日:2020/3/8

 日本最大級かつ最難関の新人賞・電撃小説大賞の新たな受賞作が決定した。第26回目となる本年度の応募総数4607作品の中から頂点に輝いたのは、いずれ劣らぬ傑作・感動作・挑戦作ぞろい。今しか書けない物語、今こそ世界が待ち望んでいる物語が、ここから誕生する――。

注目作家を続々輩出!次世代のエンタメ小説に刮目せよ!

 1994年より開始され、第26回目を迎えた電撃小説大賞。四半世紀に亘って時代を牽引する作家を、作品を多数発掘してきた。国内で開催される小説新人賞においては最多の応募数を誇り、選考は毎回熾烈を極める。それだけに戦いを勝ち抜いた作品のレベルも非常に高い。

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 ジャンルも条件も一切問わず、求められるのは「自由奔放で刺激的」という一点だけ。

 今回も、《メディアワークス文庫賞》を受賞した『今夜、世界からこの恋が消えても』(一条岬)は純粋なラブストーリー、《選考委員奨励賞》受賞の『そして、遺骸が嘶く―死者たちの手紙―』(酒場御行)は骨太な戦争文学と、多種多彩な結果となった。

 電撃小説大賞からデビューした作家勢の活躍は著しい。佐野徹夜の『君は月夜に光り輝く』(第23回《大賞》受賞)は60万部を突破したラブストーリーで、永野芽郁と北村匠海のダブル主演で2019年に映画化。北川恵海の『ちょっと今から仕事やめてくる』(第21回《メディアワークス文庫賞》受賞)は2017年に福士蒼汰と工藤阿須加で映画化され、シリーズ累計70万部を超える社会現象となった。

 他にも「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズでライト文芸というジャンルを打ち立てた三上延(第8回電撃ゲーム小説大賞応募)、あやかし小説ブームの起爆剤となった「神様の御用人」シリーズの浅葉なつ(第17回《メディアワークス文庫賞》受賞)ら、ベストセラー作家が多数ここから生まれている。

 最大級の新人賞が放つ最新、最旬の物語に、ぜひふれてみてほしい。

文=皆川ちか

 

この作品も「電撃小説大賞」出身!

【実写映画化】【コミック化】感涙必至のラブストーリー

『君は月夜に光り輝く』書影

『君は月夜に光り輝く』
佐野徹夜:著 loundraw:イラスト メディアワークス文庫 630円(税別)
月の光を浴びると体が光る発光病を患う少女まみずと、姉の死以来なげやりに生きている卓也。まみずが「死ぬまでにしたいこと」に協力するうち、卓也の止まっていた時間が動きだす――。

映画『君は月夜に光り輝く』
監督・脚本:月川 翔 出演:永野芽郁 北村匠海 2019年日本 本編101分 発売:KADOKAWA 販売:東宝 DVD通常版3800円(税別)
(C)2019「君は月夜に光り輝く」製作委員会

 

第27回電撃大賞の募集締切は4月10日!

↓↓↓↓↓

http://dengekitaisho.jp/

 

選考委員奨励賞

『そして、遺骸が嘶く ―死者たちの手紙―』書影

『そして、遺骸が嘶く ―死者たちの手紙―』
酒場御行:著 toi8:イラスト
メディアワークス文庫 630円(税別)
スモークォ国との戦争にからくも勝利した軍事国家ペリドット。優れた狙撃兵として〈丘の軍神〉とまで呼ばれた帰還兵のキャスケットは、終戦後、戦死した兵士の遺品をその家族等に渡す任務に就く。戦場で命を落とした男たちの“最期の声と記憶”を愛する者たちに届けるうち、彼もまた自分にとっての戦争を追想する――。
・『そして、遺骸が嘶く ―死者たちの手紙―』特設サイト
・メディアワークス文庫公式サイト

 

戦死者たちの想いを届ける、ある帰還兵の心の旅路

 元・狙撃兵のキャスケットは終戦後、〈陸軍遺品返還部〉に所属し、戦死した兵士の遺品をその家族のもとに届ける任務を遂行していた。

 遺された人々と出会い、死んでいった者たちの人生の一端にふれることで、キャスケットは次第に自らの過去を振り返る。そして遺品を届ける旅の果て、かつて兄のように慕い、その後わだかまりのできてしまった上官・ベーゼに会いに行く。

 作品を通じて描かれるのは、戦死した者の最期の想いと、遺された者の苦悩だ。その両方を知ることができるのは読者だけという構造が、この物語の切なさを増幅する。

 きょうだい、恋人、親子……さまざまな立場の人物たちが、そこにいない大切な人を想いながら語る、死についての言葉を通して、逆説的に生が、生きることの尊さが浮かび上がってくる。

 架空の国を舞台としながら驚くほどのリアリティが醸し出されて、第一級の戦争文学の風格さえ漂う衝撃のデビュー作だ。

キャラクター紹介

『そして、遺骸が嘶く ―死者たちの手紙―』キャラクター紹介