再現レシピ本が早くも話題。地方発“ワンオペ”YouTuber成功の哲学

　なりたい職業のランキングでトップ10に入るなど、今やテレビや雑誌よりも影響力があると考える人も多いYouTuber。誰でも動画をアップできるけれど、それを生業として生きている人は、どんな日常生活を送っているか…。そんな疑問に答えてくれたのが、料理系YouTuberとしてチャンネル登録者数は50万人を数え、安定の人気を誇る、かっちゃん。

　この度、レシピ本『人気店の味をおうちで！週末が楽しくなる再現ごはん』(KADOKAWA)を出版。Amazonの本の売れ筋ランキング等で1位を獲得するなど発売前から話題を集め、他メディアからも注目されているYouTuberだ。

　岐阜県にある実家で暮らしながら、ほぼ毎日同じ時間に動画を配信している、かっちゃん。レシピの考案はもちろん、動画の撮影、編集など、すべてひとりで自ら行っているという。そんな彼女はの1日のルーティーンはこうだ。

・朝
8時ごろに起床。朝食は基本食べず、起きたらそのままパソコンに向かう。
昼ごろまで編集作業をしたり、レシピ案をまとめる。

・昼～夕方
買い出しに出掛け、戻ったら夕方までレシピ動画の撮影。
動画の撮影・調理をしながら味見、間食をし、できあがった料理を夕飯として食べる。

・夜
風呂などを済ませ、21時ごろにほっとひと息。メールやSNSをチェック。
深夜2時まで動画編集など作業をする。

　1日をほぼ動画のために過ごしているといってもいい生活。人気YouTuberは撮影や動画編集を外部に委託したりすることも多いが…。

「役者としても活動している、瀬戸弘司さんの動画の手作り感満載の編集がおもしろくて。これなら自分もできそう、楽しそうだからやってみたい、というのがYouTubeをはじめたきっかけなんです。そこからはじめたので、編集作業は苦ではないですね。10分ほどの動画を編集するのに4～5時間かかりますが、自分が作りたい動画は頭の中にあり、人に伝えるよりも自分でしたほうが早い」。自分らしさを編集でも表現したいので、逆に人に任せられないという。

　今回発売した本は、ファミレスやファストフードの人気メニューや話題のチーズグルメなどを身近な食材を駆使して再現したレシピを集めたもの。その動画はかっちゃんの人気コンテンツとなっているが、実は最初からレシピ動画を作っていたわけではなかった。

「はじめは会社員をしながら動画をアップしていたので、仕事帰りに買ったコンビニのスイーツの食レポなどをしていました。レシピの再現動画をはじめたのは、ポテトチップスのピザポテトが販売終了になると聞いたことがきっかけ。好きなお菓子だからどうしても食べたい…それなら自分で作ってしまおうと」。その頃、再現レシピというコンテンツに手を付けている人が少ないこともあり、この動画で再生回数が一気に急上昇することに。これが会社を辞めて動画一本でやってみよう、というきっかけになった。

　職業YouTuberとなると、再生回数を伸ばすことが生活に繋がるため、かなり過激なことをする人もいるというが、かっちゃんは仕事として続けるためには、自分のスタイルを貫くことが大切だと考える。「例えば一時期大食い動画をすると再生回数が増える、ということで手を出す人が多くなったのですが、私はしませんでした。やりたくないことはしない。そうでないと続けられないですからね」。いろいろなコンテンツに手を出さず、人気のある「レシピ動画」に絞り込み、自分のスタイルを築き上げることで視聴者を拡大することに成功した。彼女の動画を観ると、実家の台所の懐かしい雰囲気や、おしゃれすぎない普段使いの器に、なんだか親近感が湧いてくる。

「人気が出てくると企業とのタイアップをする人も多いですが、そういった案件もあまりしていません。収入にはなるかもしれませんが…地方にいるので声がかかりにくいというのもあると思うんですけどね」。企業とのタイアップは魅力的だが、自分の動画と合う、合わないが出てきて、作りたいものに制限がでる…ということもあるかもしれない。あくまでも自分が楽しいこと、やりたいことを貫く。毎日アップするのは、その日に食べたものを観てほしいから。おいしいと思ったものを共有したい、共感したいという思いが動画作りの原動力なのだ。

　クリエイターとしてさまざまな能力が求められるYouTuber。ひとりでそれをするのは大変だし、アイデアも尽きてしまうので、最近は複数人で動画を作成する“グループYouTuber”が増えているという。しかし、今人気のトップユーチューバーのほとんどが、最初はすべて自分で行うワンオペのクリエイターだった。

　そして、このワンオペこそ自分を最大限に表現できると考え、岐阜県にある実家の台所で料理を作り、飾らない日常を公開し続ける、かっちゃん。普段はひとりの作業だが、今回、レシピ本を作ったことで編集者やフードコーディネーターなどさまざまな人から刺激を受けた。今後は、自分の得意を活かしながら、直接人と関わることもしていきたいという。

　自分のスタイルを貫きながら、職人のようにコツコツ手作りした動画に人々の共感が生まれ、本を出版するまでになる。そんな彼女の生き方を知ると、YouTuberという職業がとても現実味のある仕事に感じられないだろうか。