家庭や職場で頼りにされなくなったら…? 人生の幸福度に大きく影響する『50代からの人間関係』

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公開日:2020/3/14

『50代からの人間関係』(水島広子/PHP研究所)

 2020年の今では、「バブル世代」の多くが50代だ。「人生100年時代」といわれる中では50歳は折り返し地点。まだまだこれから! と言いたいところだが、人生に新鮮味を感じられず、加齢に虚しさを感じて気分がふさぎ込む「初老期うつ病」を発症しやすいのも、このくらいの年代からといわれている。バブル世代は若い頃が華やかだっただけに、ここからの人生の落差には要注意!?

 そんな時は、『50代からの人間関係』(水島広子/PHP研究所)を参考にするのもいい。精神科医である著者は「50代を健康な心で過ごせるかは重要なテーマ」だとした上で、「この年代の人間関係をよいものにできるかできないかによって、その後の人生の幸福度が大きく変わる」という。

 一般に50代というのは加齢で色々な限界を感じるようになる一方で、子どもが独り立ちして家族のバランスが変わったり、親の介護が現実的になったり、老後が不安になったりと今まで避けて通ってきたことにあらためて直面する世代だ。それらが重大な「問題」になってしまわないためには、日頃からパートナー、子ども、老親などと「よい人間関係」を築いていることが大事になるのだという。

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 だが、ちょっとした感情の行き違いを「もう大人なんだから」と流してしまったり、自分の経験への自信から頑固になったり、気をつけないと対人関係がギクシャクしてしまうのも50代。そのままにしていると孤独な後半生になり、生きる喜びを見失いかねないというから大変だ。

 本書によれば、対人関係のつまずきには「慣れを意識する」のも大事な回避法になるとのこと。よく妻が出かけると夫が不機嫌になるという話を聞くが、こういうケースは妻の不在で生じるストレスに夫が慣れていないために起きる反応でもある。そんな時には夫に「慣れてもらう」ための時間を作ればいい。例えば作り置きの料理を用意して出かけるのをステップ1にしつつ、前向きな声かけでその気にさせて、いずれ自分でなんとかするよう仕向けていければ御の字。「わかってもらえない!」と憤るより、相手の「慣れ」に焦点を当てて待つことで、円滑な関係が生まれるというわけだ。

 また家庭や職場で頼りにされることが少なくなって虚しさや寂しさを感じた時には、「与える」視点を持つのも関係を良好にするポイントだという。「大切にしてもらえない」ことの解決策は、「どうすれば大切にしてもらえるか」ではなく、実は「どうやって相手を大切にするか」。相手が成長した子どもであれば、いちいち口出しするより「どんなことがあっても味方だよ」と態度で示した方がずっといい。年齢を重ねたからこそ与えられるじんわりした温もりが、良好な人間関係の素になるわけだ。

 元は読者のリアルな悩みに答える雑誌連載から生まれたというだけあって、内容がかなり具体的なのがありがたい一冊。バブル世代特有のお悩みというわけではないが、友人への過剰な期待をクールダウンさせたり、女同士の派閥争いへの対処法を伝授したりと、生々しく悩ましい関係も扱うのも興味深い。実は人間関係の悩みというのはどの世代にも必ずあるものだ。タイトルこそ50代に限定はしているが、本書は様々な世代の参考になるに違いない。

文=荒井理恵