結婚しても「壇蜜」であり続ける――あるがままの私生活を覗き見!『結婚してみることにした。壇蜜ダイアリー2』

文芸・カルチャー

2020/3/26

『結婚してみることにした。壇蜜ダイアリー2』(壇蜜/文藝春秋)

「いい夫婦の日」の11月22日には毎年、仲睦まじい芸能人夫婦のニュースがメディアで取りざたされる。しかし、昨年は世の男性が悲しみにくれるニュースが飛び込んできた。人気タレント、壇蜜さんの結婚報告だ。

 お相手は『青春ヒヒヒ』(集英社)や『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』(双葉社)といった人気漫画を生み出した、漫画家の清野とおるさん。意外な夫婦の誕生に日本中がどよめき、日本一セクシーな新妻を手に入れた清野さんには羨望の眼差しが向けられた。

 そんな衝撃的なニュースの裏側も知れるのが、ほろ苦くて甘いリアルを惜しみなく綴った『結婚してみることにした。壇蜜ダイアリー2』(壇蜜/文藝春秋)。本作は『壇蜜ダイアリー』の続編で2018年から2019年までの壇蜜さんの日常がしたためられている。

 妖艶かつ知性や芯の強さを感じさせる壇蜜さんは男性だけでなく、女性からも好かれているが、なぜ、人々は壇蜜さんに引きつけられてしまうのか。彼女の日常を知ると、その答えが見えてくる。

孤独感とユーモアが共存する『壇蜜ダイアリー』

 芸能人の日常には、私たちが想像できないような煌びやかな事柄がたくさんあるように思える。だが、壇蜜さんが綴るありのままの日常は良い意味で真逆。容姿端麗でスポットライトを浴びている芸能人も華々しく活躍する裏では悩み、時には自信を喪失しているひとりの人間なのだということに気づかせられるのだ。

 壇蜜さんの紡ぐ自虐的な文には、孤独感とユーモアが共存している。その絶妙なバランスに読者は引きつけられ、彼女の見ている世界をもっと知りたいと思う。数行の何気ない日常報告。それだけで人の心を魅了する壇蜜さんはやはり「妖艶」という言葉だけでは語り尽くせない、魅惑的な女性なのだ。

 それが伝わってくるのが2018年の自分を振り返った、12月31の日記。

嘘は少しついたが、比較的善人のふりをして生活できた一年。

 自分のことを少しななめに俯瞰するドライな感性を、たった一文で伝えられる壇蜜さんに脱帽してしまう。

 自分に寄せられる厳しい声にすら感謝する器量を持ち合せているのも壇蜜さんの魅力だ。

ドラマに出たら演技が下手だと言ってくれる人は、私のことをよく見てくれる人。

 さらに、壇蜜さんは日常の中で私たちが抱く、ままならない感情に寄り添ったり、痛みを抱えながらも上手く生きていく術を教えてくれたりもする。

お金持ちに飼われている犬の方が自分より幸せだと疑う時期があった。小学生のとき。

畳んだゴミはゴミ袋に綺麗に収納されて、捨てやすくなる。自分にも折り合いをつけた方が上手いこと過去を捨てられるかもしれない。

 あんなに綺麗で知的な女性と自分を同等だと思うのはおこがましいが、ストレートに紡がれる弱音や自己否定感を目にすると、「私も同じ」と言ってもらえているような気がして、心が楽になる。

結婚しても「壇蜜」であり続ける

 祝福の言葉が溢れた11月22日、当の本人はどんな思いだったのか。それが知れる本作はファンならずとも、興味深い一冊。結婚後は清野さんとのやり取りがたびたび綴られるようになるが、壇蜜節は健在。「夫」や「旦那」ではなく、「亭主」という呼称を選んだところも彼女らしい。2人の新婚生活を覗き見ると、深い愛情を注ぐ清野さんと変わらない壇蜜さんの姿が目に浮かぶ。

亭主から紫メインの大きな花束をもらう。大きな花瓶がないのでバケツにさして眺めた。

 結婚しても、壇蜜さんは変わらない。そう感じさせてくれる本作は、自分の生き方にくたびれてしまった時にもつい手に取りたくなる。

 プールで泳いでいる時に水死体の話を思い出したり、ナマケモノを家族の一員として迎えたりする壇蜜さんの日常は驚きに満ちており、哀愁も感じさせる。飾り立てない私生活を覗くと、壇蜜というひとりのタレントが今以上に好きになり、改めて彼女の幸せを願いたくもなるだろう。

文=古川諭香