お手伝いは入札制!? “スゴ母”たちの強烈エピソードが心の杖になるかも…わが道を行く母たち

出産・子育て

2020/4/8

『スゴ母列伝 いい母親は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける』(堀越英美:著/大和書房)

 コロナ騒ぎで世界中にリモートワークが広がる中、先日、在宅勤務の苦労を伝える海外のママのユニークな投稿がSNSでまわってきた。見れば子どもの手足と口をテープで封じて床に転がし、ママと思しき女性がPCとにらめっこ…こんなご時世だから成立するブラックジョークだが、中にはこの投稿で「岡本かの子」を思い出した方もいるかもしれない。

 岡本かの子とは、現代日本を代表するアーティストの一人・岡本太郎の母。自身も作家として多忙を極めた彼女は、息子の太郎が仕事の邪魔をすると柱や箪笥に兵児帯で縛り付けたという。「私は裸で、本当に犬の子のように、四つん這いになって母の背中を悲しく眺めていた」(岡本太郎『一平 かの子』より)との息子の回想がちょっと悲しいが、それでも様々な偉業を残す大芸術家になったのだから世の中はわからない。

 こうした行いは決して褒められるわけではないが、それでも「子育てはこうあらねばならない」みたいな理想に締め付けられて、なんだか息苦しさを感じているお母さんたちにはちょっとした息抜きになることもあるだろう。このほど登場した『スゴ母列伝 いい母親は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける』(堀越英美:著 大和書房)は、世界各国の女傑の子育てに注目した一冊。まさに、かの子の子育てエピソードを心の支えにしたという著者が「もっと多様なスゴ母(正しい母になりきろうとするのではなく、自分を貫いて独特な育児をする『スゴイ母』のこと)を知り、自己肯定感に拍車をかけたい」と編んだ一冊だ。

 本書に登場するのは、岡本かの子をはじめ、放射線研究のパイオニア「キュリー夫人」ことマリー・キュリー、モンテッソーリ教育を生み出したカリスマ教育者マリア・モンテッソーリ、ミステリ界の女王・山村美紗など、自身の偉業が今も語り継がれるバリバリのワーキングマザーもいれば、逆に育てた子どもたちの活躍がそのスゴさを逆照射する養老孟司氏の母・養老静江、政治家家系の鳩山一族の原点・鳩山春子、婦人運動家山川菊栄の母・青山千世など様々。

 家事はそっちのけで仕事に没頭したり、自由すぎる感性で周囲を振り回したり、そのスゴ母ぶりは三者三様だが、「私はこう思う」「私はこうしたい」という意志を曲げずに自分の道を突き進み、女に押し付けられがちな「こうあらねば」という社会の壁と奮闘したのは皆同じ。そして多忙でも子どもたちの教育には熱心に関わったのは、今よりも女性が道を拓くのが難しい時代にあって、教育こそが「自由に生きるための力」となることを自身の体験で本質的に理解していたからなのだろう。

 自宅待機で子どもとの距離の取り方に頭を悩ませているいまどきのワーキングマザーには、こうしたスゴ母の一風変わった教育法がヒントになることもあるかもしれない。たとえば労働環境合理化のパイオニアである12人の子持ち研究者リリアン・ギルブレスのコスパ重視の子育て法(家計のコストバランスを家族会議で共有しお手伝いに自覚を持たせる、お手伝いをより安価で引き受ける人が勝つ入札制にするetc.)など、型破りで思わず笑ってしまうが考え方は応用できそうだ。

 …と、こうしたエピソードの数々は、是非とも本書で楽しんでいただきたいが、スゴ母たちがどんなトンデモ育児をしようと、その子たちはいずれも立派すぎるほどに育っていることだけはお忘れなく。「子どもは親の背中を見て育つ」という言葉に倣うならば、おそらく彼らも「私」を貫いて闘う母の背中を見てよりたくましく育ったのだろう。大抵の母たちは、本書のスゴ母たちのいろいろな意味での邁進ぶりには到底及ばないかもしれないが、「自分は自分のやり方でいい」と強く生きる彼女たちの姿に、きっと勇気付けられると思うのだ。

文=荒井理恵

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