「女らしさ」に疲れたあなたへ。自分探しにもがくあなたも共感必至の等身大ストーリー

マンガ

公開日:2020/5/14

『ケムリが目にしみる』(飯田ヨネ/芳文社)

 多様性やジェンダーレスの概念が浸透してきたように思われる今も、「男らしさ」「女らしさ」をめぐる問題は尽きない。たとえば、オフィスで交わされるこういった何気ない言葉に“居心地の悪さ”を感じたことはないだろうか?

「女の子が淹れたお茶の方がいいね」
「私なんてもうババアだから…」
 
「ん?」と疑問に思うことはあっても、ただ愛想笑いして流してしまいがちな言葉だ。でもやはり心のどこかに引っかかる…そうしたことを繰り返すうちに、「ああ、なんか生きづらいなあ」と思うのだ。『ケムリが目にしみる』飯田ヨネ/芳文社)は、そんな人の心に刺さるリアルな感情を描いたOL2人の友情マンガだ。
 
 主人公の葉山かすみは26歳事務職。毎朝の日課は、ゆっくり丁寧に1本だけ煙草を吸うこと。職場の同僚には「煙草を吸う女」とは思われたくないので秘密にしている。
 
 ところがある日の飲み会後、一服しているところを会社の同僚の牧村に見られてしまう。焦った葉山は慌てて口止めしようとするが、牧村は「『この人も結構めんどくさそうな人だな』…と少し興味がわきました」と言ってのける。
 
 学校で教わったわけでもないのに、「私なんて大した仕事してないから」「もうババアだから」などと、謙遜するのが「正しい」とどこかで知る瞬間がある。その方がラクだし、自分に自信なんか持っていても笑われるだけだから…。
 
 でも、牧村はそういったことは一切しない女性だ。上司相手にセクハラを指摘しては周囲の空気を凍らせ、デリケートな話を振られれば「そういう話題をされるのを好みません」ときっぱり返す。
 
 ときに周囲の反感を買い、「不愛想」「冷たい」と言われながらも、「どうせ苦しいなら私はせめて胸を張りたいな。そのほうが…自分を好きでいられると思うので」と呟く牧村に、読者もきっと心揺さぶられる。たとえ生きづらくても、もう自分を安売りしたくない、と思うのだ。
 
 同じような気持ちが葉山にも芽生え、だんだんと牧村に影響されていく。はっきりと意見を述べるような態度だけではなく、服装はスカートからパンツへと変わり、おろしていた長い髪は結ぶようになった。
 
 物語はそんな単純な変化では終わらない。イメチェンを遂げた葉山に、こんな一言が浴びせられる。

「なんか誰かの真似みたいだから」

 葉山と一緒になって「そうだ、私もこんな自分になりたい」と読者の気持ちも盛り上がってきたところに、痛烈な一言だ。

 憧れの人の真似をして得た新しい自分は、ありのままの自分になったといえるのか――人に流されず「本当の自分」であるということは、いったいどれだけ難しいのだろう。

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 本作は、4月に2巻が発売され、ストーリーが完結したばかり。ぜひこの機会に一気読みして、葉山と一緒に「自分探し」を考えてみては?

文=寿々