車掌の仕事は刑務所の塀の上を歩いているようなもの!? 乗務員室から見た鉄道打ち明け話

社会

公開日:2020/5/18

『乗務員室からみたJR 英語車掌の本当にあった鉄道打ち明け話』(関大地/ユサブル)

 大人になった今でも、ふと鉄道に心を奪われそうになる瞬間がある。駅に停まっている見知らぬ特急が「どこに向かうんだろう」と気になったり、新幹線の運転席はどうなっているんだろうと考えてみたり…。少年時代に「車掌さんになりたい!」と一度は思ったという人も、意外と少なくないはずだ。
 
 今ではまったく異なる仕事に就いてしまったが、元JR東日本車掌・関大地さんによる『乗務員室からみたJR 英語車掌の本当にあった鉄道打ち明け話』(ユサブル)を読み進めていくと、子どもの頃の憧れがふたたび込み上げてくる。

車掌の仕事は「刑務所の塀の上を歩いている」ようなもの?

 著者の関さんは、高校卒業後にJR東日本へ入社。当初は新幹線の保線を担当する職場へ配属されたが、のちに車掌となった。じつは、高崎線ではじめて英語でのアナウンスを取り入れた人物としても、知られている。

 車掌になった当時、著者は先輩から「車掌の仕事は刑務所の塀の上を歩いているのと同じだぞ」と言われた。その言葉の真意は、以下のように綴られている。

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“この表現は、先輩が「ちょっとした気の緩みが事故を引き起こす」という意味で使われたものだったのだ。詳しく話を聞くと、そのときに運悪く重大な過失が認められれば、車掌が起訴されてしまうこともあるそうだ。
大げさのように感じるかもしれないが、僕はその言葉を退職するまでずっと心に刻んで受け止めていた。”

 例えば、誰かがドアに挟まった状態で出発してしまえば、乗客は命を落としかねない。関わる一人ひとりの細かな気配りで、私たちの安全は保たれているのだ。

トラブル発生時は瞬時に状況を判断

 車掌の仕事は、その場その場でとっさの判断を求められる機会も少なくない。電車内で流れるアナウンスもそのひとつ。通常の案内は録音による自動音声が使われるようになったが、トラブルが発生したときは、乗客へ伝えるためにあらゆる情報を瞬時に判断しているという。

 例えば、何かしらの原因でダイヤが乱れた場合、電車内の乗務員室では以下のようなことが行われているそうだ。

“車掌は、「現在、運転を見合わせている路線はどこなのか?」「逆に、運転している路線はどこなのか?」など、指令員からの無線や電車の運転台にあるモニターに送信されてくる情報などを基に、情報を仕入れて車内アナウンスをする”

 そして、もうひとつ大切なのは、整理した情報を乗客へ分かりやすく伝えること。著者は車掌として勤務していた時代、同じような場面では「いかに分かりやすい言葉を使うか」に気を配っていたという。

 みずからの経験をもとに鉄道の裏側を明かす著者の話はどれも興味深いものばかり。本書を読めば、いつものように使う駅や電車の景色も、ちがってみえてくるはずだ。

文=カネコシュウヘイ