雑草はなぜあんなにも生存力があるのか。雑草に学ぶオンリー1の戦略でコロナ時代を生き残る

ビジネス

公開日:2020/8/3

雑草という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか
『雑草という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか』(稲垣栄洋/日本実業出版社)

 コロナ禍で私たちは、さまざまな変化を強いられている。職場のリモート化による働き方の変化に象徴されるように、従来の常識が通用しなくなり始めた今、自分自身の意識をいかに対応させていくかは誰しもに共通する課題だ。

 そんな誰もが答えを持てない時代に道ばたに生える「雑草」から生き残るための戦略を学ぼうと提案するのが、植物学者によるビジネス書『雑草という戦略 予測不能な時代をどう生き抜くか』(稲垣栄洋/日本実業出版社)だ。

生存競争にさらされる雑草は「もっとも進化した植物」

 植物たちは常に激しい生存競争にさらされている。しかし、過酷な世界に身を置く雑草は「もっとも進化した植物」だと著者は主張する。

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 考えてみれば、雑草ほどどこでも見かける植物はない。道ばたや空き地など、場所を問わずにたくましく生きている植物はほかにないのだ。しかし、彼らはなぜ強くたくましく生きられるのか。その理由として著者は、雑草の「多様性」に注目している。

 例えば、大きな種子と小さな種子は、どちらにも長所と短所がある。大きな種子は栄養分が十分なため生存率も高く成長も早まるが、親となる植物にも豊富な栄養分が求められるので数が少なくなる。小さな種子は反対に、栄養分も少なく生存率も低いが、数が多くなるために生存競争に勝つ確率も高まる。

 何かを得るために、別の何かを犠牲にする関係は「トレードオフ」と呼ばれるが、雑草は常にその選択肢にさらされている。「一万粒のうち一粒でも命をつなぐことができれば、その雑草にとっては、成功である」といわれるほどの過酷な生き方は、失敗を恐れずに小さなチャレンジを積み重ねることが、いかに大切かを気付かせてくれる。

雑草が教えてくれるビジネスにも役立つ“戦略”の大切さ

 雑草とひとくちにいっても、地球上にはさまざまな種類がある。自然界で生き残るには「オンリー1の戦略を持ち、オンリー1の地位を確保すること」が重要だとする著者は、植物ごとの生存戦略について解説する。

 例えば、春を思わせるナノハナは、アブに花粉を運ばせるため1箇所に「集まって咲く」という生態を持つようになった。野原に花畑ができるのはそのためなのだが、これはビジネス用語として知られる、チェーン店などが絞った地域へ集中的に出店する「ドミナント戦略」と重なる。

 また、海外からやってきた外来種・セイタカアワダチソウが取った、みずからの戦略を通して、反面教師として私たちに「独占状態になることが、はたして良いことなのだろうか」と投げかける。

 彼らは他の植物に影響を及ぼす「アレロパシー」と呼ばれる物質を持っていた。セイタカアワダチソウの汁には、発芽や成長を抑制する効果があったが、日本の植物を駆逐した末に自家中毒を起こして衰退の一途をたどってしまった。著者はこれを「アレロパシー戦略」と称しているが、ひとたびバランスが崩れると、誰も生きていくことができない世界になりかねないと警鐘を鳴らしている。

 さて、私たちも今まさに、生き残るためのさまざまな選択を求められている。物事の原理原則や本質は、どの生き物にも共通していること。雑草のたくましさをヒントに、ウィズコロナやアフターコロナに向けた生き方をそれぞれ考えてみてほしい。

文=カネコシュウヘイ