会議は「30分以内・5人まで」…日本マイクロソフトの働き方に学ぶ、勝ちパターンを見つける方法

ビジネス

公開日:2020/8/26

職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」
『職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」』(沢渡あまね/文藝春秋)

 コロナで多くの企業がリモートワークを実践したことで、「これからの時代の働き方」というものが一気にリアルに感じられるようになってきた。残念ながら緊急事態宣言解除後は元に戻ってしまったという声も聞くが、それでもこの経験から私たちの社会が学んだことは少なくない。せっかくならそんな「実感」を無駄にせず、いまのうちに「これからの社会に望ましい働き方」を考えていきたいものだ。

『職場の科学 日本マイクロソフト働き方改革推進チーム×業務改善士が読み解く「成果が上がる働き方」』(沢渡あまね/文藝春秋)は、日本マイクロソフトが労働生産性をあげるために模索してきた取り組みから、これからの企業の「勝ちパターン」とは何かを考えるという一冊。マイクロソフトが取り組んだ「現場の課題」とはなにも特殊なものではなく、さまざまな業界、企業、組織に共通であり、多くの人にとって今後を考えるヒントになるだろう。

 ただし改善のスピード感や思考の柔軟性などは、さすが外資系IT企業。しかも改善のベースに自社でつかんだ「社員の働き方データ」があるというのが驚きだ。「一週間に働いた時間」「メールの本数や相手、作成に使った時間」「どの会議に何時間参加したか」など自社ソフトを使って把握した定量的なデータに加え、定性的な「モチベーションや満足度・職場への思い」などのデータを年1回のアンケートで把握。働き方を「見える化」することで、たとえば「働きぶり」と「成果」の関係を客観的に分析し、浮かび上がる課題を具体的な共通認識にしていったのだ。もちろん職場の全てをデータ化できるわけではないが、そこに真実の一側面が見えるのは事実。具体的だからこそ解決の方法も見えてくるし、そうした実践が自社にとっての「勝ちパターン」になっていくのだ。

 たとえば多くの人が「削減したい」と思うのは「紙」と「会議」だが、実際、日本マイクロソフトのデータからも「紙は職場の生産性を下げる」「人数の多い会議は生産性もやる気も低下させる」「会議は別に集まってやらなくてもいい」などさまざまな改善すべき課題が明らかになった。

 中でも「紙」の場合、会議のたびに紙資料を用意するのは非効率だし、紙にした時点で情報が固定され鮮度も落ちれば他との情報共有も難しい。そのため日本マイクロソフトではペーパーレス化を推進し、情報は原則オープンに、誰でもリアルタイムにアクセスできる環境を整えた。その結果、会議やプレゼンの席では参加者がその場で最新データにアクセスするのが当たり前になり、多くの社員はPC一台で仕事ができるため「フリーアドレス」の有効活用も進んだという。これからの時代はよりスピード感のあるコラボレーション型ビジネスが増えるともいわれており、もはや「紙」のままでは時代遅れ。「ペーパーレス=環境負荷軽減」を超えた戦略的視点を持つことは、会社の生命線になってくるかもしれない。

 また、会議にしても「大人数」「長時間」「繰り返し」が社員のモチベーションを明らかに下げることがデータから明らかになっており、マイクロソフトでは会議を「基本30分以内」「人数は多くて5人」とすることにチャレンジするなど改善に余念がない。いきなり30分は難しくとも「1時間を超えない」と時間管理を組織で徹底するなど、その姿勢に学ぶところは多いだろう。

「メール中心のコミュニケーションはもう古い」「部下からの信頼が厚い上司はメールの返信が3時間早い」「結果を残すのは〈個人で力を発揮できる人〉ではなく〈コラボできる人〉」など、ほかにも興味深い改善点を多く提供してくれる本書。ただしあくまでも日本マイクロソフトの実践はひとつの例であり、「それぞれが自分なりの勝ちパターンを見つけることが大事」だと著者は強調する。自分の職場を振り返り、本書で得た気づきをどう活かせるか考えること。勝負はまずそこからだ。

文=荒井理恵

この記事で紹介した書籍ほか