なぜ在宅での仕事は集中できない? 在宅勤務を史上最高にアップデートするノウハウ

ビジネス

公開日:2020/9/2

『在宅HACKS! 自分史上最高のアウトプットを可能にする新しい働き方』(小山龍介/東洋経済新報社)

 在宅での仕事が当たり前になりつつある。これまではあくまでも非常時の働き方であったが、最近は風向きが変わってきた。富士通などの大手企業が在宅勤務への移行を発表したことなどから、これから続く企業もどんどん出てくるだろう。筆者が勤める会社でも在宅勤務が続いており、先日はついに仕事用の椅子を購入した。なんでもっと早く買わなかったのか…と後悔するほど座り心地が良く、腰が疲れなくなった。やはり環境は大切である。
 
 こういった働き方が当たり前になっていく中で、そろそろ本格的に在宅環境を整えたい――そう考える社会人におすすめしたいのが『在宅HACKS! 自分史上最高のアウトプットを可能にする新しい働き方』(小山龍介/東洋経済新報社)。疲れにくい椅子、モニター、リラックスできるスペースなど、当然のようにオフィスにあったものが家にはない。また、仕事の進め方やキャリアプランなど、在宅勤務になったことでの変化は大きい。2008年に会社を辞めて以来、在宅を中心に仕事や執筆、教職など複数のキャリアを歩んできた著者が、在宅勤務のコツを紹介してくれる。

環境づくりのコツは…脳の「認知資源」を消費しすぎないこと

「家だとなかなか仕事に集中できない。やっぱりオフィスのほうが…」という方も多いだろう。なぜ、在宅だと集中できないのだろうか? 原因はいろいろあるが、そのひとつは「脳の認知資源」に関係しているという。私たちは、散らかっている環境を目にしつづけると、脳のリソースをムダづかいしてしまい、集中力が持たなくなる。ある研究によれば、作業環境を整理すると、集中力と情報処理能力が改善したそうだ。

 在宅勤務の環境づくりをする際は、ぜひこの「認知資源」の観点を考慮してほしい。デスク周りを散らかさないのは基本として、たとえばディスプレイの使い方も工夫できる。仕事中は、Excelで作業をしたり、データを見たり、ビデオ会議をしたり…といろいろな作業をする。ひとつのパソコンで済ませようとすると、どうしても画面がごちゃつく。そこで、たとえば目的別に複数のディスプレイを用意すれば、脳のリソースを節約できる。パソコンの画面はチャットツールやSNSなどのコミュニケーションに、大型ディスプレイは作業用に、といった具合だ。

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マイクロマネジメントはNG こまめ成果報告が好循環を生む

 在宅勤務でのコミュニケーションはなかなかむずかしい。チームで作業をしていると、「あの人はちゃんと働いているんだろうか?」と不安になることもある。「進捗どうですか?」と訊きたくなるが、相手からすれば「自分は信頼されているのか?」という疑念を生んでしまうことも。不安から行われる過度な進捗管理は、仕事を頼む側・頼まれる側にとって悪循環になる。

 この悪循環を打ち破るには、「こまめな成果報告」がいちばんだという。チャットツールなどで、何かをやるたびに「◯◯できました!」と報告をあげるようにしてみよう。その報告には、「いいね!」「さすが」などのスタンプがつく。そうすると、仕事をやった人は、見られている、感謝されているときちんと実感できる。仕事を振る側も、メンバーの進捗が確認でき、何か問題があっても迅速にフィードバックができる。仕事ぶりを確認できる、働きぶりが感謝されるという好循環が生まれるのだ。

 本書ではこれらの他にも、仕事のペースが作りづらい在宅でのタスク管理や、メンタルを整える方法も紹介されている。また、通勤から解放されたことによる、キャリアの可能性の広がりにも言及。在宅勤務は、個人のブランド力を高め、ひとつの会社に留まらない働き方を加速させていく。本書は、単なる在宅勤務のノウハウ提供だけに留まらず、これからの自分の働き方を見つめなおすきっかけにもなるはずだ。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7