孤独なヘッドホン女子が異星人間の闘いに巻き込まれていくSFアクションコミック

公開日:2012/6/28

70億の針 (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/WindowsPhone/Android 発売元 : KADOKAWA
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:多田乃伸明 価格:429円

※最新の価格はストアでご確認ください。

寄生した異星人と共に、悪の異星人に闘いを挑んでいく女子高生の、心の成長物語。

主人公の女子高生・高部ヒカルは、ある事故に巻き込まれ、体内に未知のプラズマ生命体「テンガイ」を共生させることとなります。
テンガイが言うには、人間になりすまして殺戮を繰り返し、いずれは人類は滅亡させる悪の生命体「メイルシュトローム」を追って地球にやってきたとのこと。
ヒカルとテンガイは、メイルシュトロームを見つけ出し、闘いを仕掛けようとするが…

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SFアクションコミックファンなら、類似設定の作品をいくつか思い浮かべるかもしれませんが、本作で斬新なのは、まず主人公が女子高生で、しかも社交的ではない、というところです。
いわゆる引きこもり系なのではなく、人と仲良くしたいのだけれど、過去にあった出来事からそれができず、人を拒絶するフリをする。授業中であっても休憩中であってもヘッドホンをして、近くに寄せつけない雰囲気をあからさまに出している。
人が仲良くしているところを見ると、苛立ち舌打ちをして音量を上げ、ますます孤独の世界に入っていく。

そんな彼女は、我が身に信じられないことが起きても、誰にも相談できず、ひとりで問題を抱え込む。このあたりの表現がリアルで感情を入れ込んでしまいます。

さらには、描写のグロさ。血が吹き出します。骨がむき出しになります。
そんな中を、電撃などの付加能力以外は、至って普通な女子高生が立ち向かっていきます。
彼女の心を強くするのは、友達の存在。このあたりの展開がとても熱いのです。

ちなみにタイトルの『70億の針』というのは、地球の人口を意味します。
前述のとおりメイルシュトロームはひとりの人間を宿主として寄生し、乗っ取り、平静を装います。70億の人間からメイルシュトロームを特定するのは、ワラ屑の中からたった1本の針を探しだすようなもの、ということなのです。

地球規模で描かれる悪との攻防と同時に描かれる、女子高生の孤独な心情と成長のコントラストが、鮮やかでダイナミック。
セカイ系の枠に収まらない、胸がハラハラ・チクチクするエンターテインメント作品です。


流れ星だと思ったら、角度を変えて目の前に…

冒頭から衝撃的な展開。流れ星の熱と衝撃で…死んだ…?

…かと思ったら、生きていた。人が仲良くしている様子が気に食わない

血だらけの体育館にて。悪の生命体との闘いに巻き込まれていく (C)Nobuaki Tadano/MEDIA FACTORY