1000年以上前に、歌人たちが代弁してくれていた、私たちの気持ち

コミック

2012/5/30

超訳百人一首 うた恋い。

ハード : 発売元 : メディアファクトリー
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:Amazon.co.jp/楽天ブックス
著者名:杉田 圭 価格:1,026円

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「誰にも知られずあなたのところへ会いに行けたらいいのに」「ずっと愛すると誓ってくれたけど本当?」…高校で古文の授業を受けていたとき、文法や固い現代語訳につっかかりながらも、平安時代の殿上人って現代の私たちとほとんど同じように恋をしたり悩んだりしていたんだなあと思っていたもの。しかし、この作品を読むと、もっともっと和歌の時代の歌人たちを身近に感じます。——ほとんど同じように恋をしていたどころか、小倉百人一首は会いたくて会いたくて震える以上のラブソング集ではありませんか。

その百人一首のなかでも切ないエピソードのある和歌をコミックにした本書。作者はもともとWEBで作品を発表していて、プロとしては本作でデビュー。しかし、WEBでの動画再生回数が550万以上(書籍版初版当時の累計)というだけあり、表情豊かなキャラクターと、映画のようなコマ割りで、私たちを平安貴族の世界にすんなり連れて行ってくれます。とくに手の描かれ方が美しすぎる!

コミックも面白いのですが、ショートショートあり、百人一首百首すべての超訳あり、当時の政治的な背景や習俗をさっくり解説してくれる「ていかメモ」というコラムありで読みどころも満載。制作者はかなりの歴女・雅美女とお察しします。「はじめに」で、現代以上に身分の差に厳しく、メールも携帯もなく、通い婚であるなどほとんどの恋愛が「忍ぶ恋」にならざるを得なかった状況が説明されているのもわかりやすく、作品に入りやすいのです。

「ちはやふる」読者になら副読本として一家に1冊(かなちゃんの気持ちがすごくよくわかる)。そのほか日本文学好き・歴史好きにも自信を持ってお勧めですが、古文を選択した高校生にとっては役立つ参考書以外の何者でもないし、恋愛小説が大好きな女性の方にも読んでいただきたい。つまり、本好きな皆さんにお勧めできる本ですよ。

電子書籍版は、見開きが切れちゃったりするのがちょっと残念なところ。しかし通勤通学の電車中で平安時代の恋物語に思いを馳せるというのもまた乙なものかもしれません。


キャラクターの心情を顔ではなく手に語らせる心憎さ

ショートショート、本人パロディみたいですが笑えます

身分でがんじがらめの貴族たちにとって、自由になれるのは和歌の世界だけだった
※画面写真はBOOK☆WALKERのものです