伝説的学園ホラー&ミステリー『Another』7年ぶりの新刊! 人気原作と話題アニメの見どころを一挙紹介

文芸・カルチャー

公開日:2020/10/18

『Another 2001』(綾辻行人/KADOKAWA)

 綾辻行人さん7年ぶりの長編小説『Another 2001』(KADOKAWA)が発売された。TVアニメ化された伝説的学園ホラー&ミステリー『Another』の続編だ。2013年に刊行された『エピソードS』が外伝的な内容だったことを考えれば、再び〈災厄〉に襲われる夜見山北中学校の三年三組を描く『2001』は、まさに正統な続編といっていい。800ページ近い贅沢な物語を120%楽しむために、シリーズ内での位置づけや続編ならではのおもしろさを紹介したい。

『Another 2001』を全力で楽しむには?

 TVアニメ「Another」の放送は2012年だったから、そのころにアニメを見た、あるいは原作を読んだという方は多いだろう。また、『Another』のタイトル名だけは知っていて、新刊発売を機に過去シリーズに手を伸ばそうとしている人もいるはず。ということで、『2001』を読む前の準備として、シリーズ全体の流れをおさらいしたい。
 
 まず、第1作の『Another』は、1998年の夜見山北中学校三年三組に降りかかる〈災厄〉を描いたシリーズの原点。転校生の榊原恒一(さかきばら こういち)が、ヒロインの見崎鳴(みさき めい)とともに、関係者が次々と理不尽な死をとげる〈現象〉の謎に立ち向かう。三年三組に紛れ込んだ〈死者〉が物語のカギを握っており、死の恐怖が迫るホラーの要素と、〈死者〉が誰かを突き止めるミステリーのおもしろさの融合が話題となった。これがTVアニメ版の原作にあたる。

 アニメ終了後に刊行された『Another エピソードS』は、鳴が賢木晃也(さかき てるや)の幽霊に出会うストーリー。かつて〈災厄〉に巻き込まれた経験を持つ彼は、3カ月前に命を落としたというが、死の瞬間の記憶がない。自らの死体を探す賢木とともに、鳴は彼の死の真相にたどり着く…。〈災厄〉がメインではない外伝的な話なのだが、『2001』で主人公となる比良塚想(ひらつか そう)が登場する。当時は小学生ながら、『エピソードS』で起こった事件が彼の人格形成に大きな影響を与え、『2001』でも度々そのことに触れられる。そのため、『エピソードS』→『2001』の順で読むとより深く物語に入り込んでいけるだろう。

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『Another 2001』の続編ならではの魅力

 そして本作『Another 2001』は、恒一たちが三年三組だった1998年の3年後にあたる、2001年の夜見北中が舞台だ。成長した想が恒一や鳴の力も借りながら、〈災厄〉による死を回避すべく立ち向かう。1作目との大きな違いは、主人公が〈災厄〉の恐ろしさと対策を知っていることだ。恒一が夜見北に転校してきたときは、三年三組に伝わる噂話を教えてもらえず、読者同様に“何が起こっているかわからない”という状態からのスタートだった。

 しかし、すでに『Another』を体感している読者は、当然〈災厄〉がどんなものか、何をすれば防げるかということを知っている。だから、〈現象〉そのものは恐怖や謎の対象にはなりえない。そこで著者がとったアプローチが、〈災厄〉について恒一や鳴から聞いている想を主人公に据えることだった。今回は、〈災厄〉に対して積極的な対策が取られるし、〈死者〉の名前も早々にわかってしまう。今度は、なんとかなるだろう…。そう思っていた先に、さらなる謎と恐怖が待ち受ける。これが続編ならではの見どころだ。

 もう1点、語らずにはいられないのがTVアニメ版と新刊との思いがけない関係性。だから、原作を読んだのがずいぶん前で、内容をあまり覚えていないという人は、あえてTVアニメ版で復習してみるというのも一興だろう。7年ぶりの『Another』、ぜひ万全の態勢で深く何度も味わってほしい。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7