これが0歳児…爆速成長で見逃し厳禁! SNSで話題の育児コミックエッセイ「365日アカチャン満喫生活」

出産・子育て

公開日:2020/11/18

365日アカチャン満喫生活
『365日アカチャン満喫生活』(倉田けい/KADOKAWA)

 未知の生命体「アカチャン」がやってきた! TwitterなどSNSで大きな話題になったのが『365日アカチャン満喫生活』(倉田けい/KADOKAWA)だ。

 本作は育児開始からの最初の1年間にふりきったコミックエッセイ。プレママ、パパに言っておきたいのは0歳児の成長速度は半端じゃない、ということ。「はじめてやれたこと」が数多くあり、これらはまさに“イベント”なのだ。親はこれら全てをしっかり目に焼き付けておかないと後悔する…と本稿のライターは、本作を読んで今更ながら数年前を思い出した。

 濃密な割にはあまりにも短すぎる日々、それが生まれてからの365日なのである。赤ちゃん感は徐々になくなっていくわけではない。中身の成長はともかく「アカチャン」(本稿では0歳児=アカチャンと表記する)は、あっという間に「ニンゲン」へ進化していってしまう(いや嬉しいことではあるが)。

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 本作は、そんなその時期が懐かしく思える方、これから子育てを頑張ろうという方にぜひ読んでもらいたい。

すぐ消えてしまいそうな「尊い日々」を描写&分析しまくり

 2019年に長男を出産した著者・倉田けいさんは、SNSで子供の成長の記録をマンガにして投稿していた。それがたちまち人気となり、今回まとめられて単行本となった。倉田さんのTwitterフォロワーは8.2万、Instagramフォロワーは2.9万となり、今や「育児インフルエンサー」の一人と言っていいだろう。

 作品の魅力は何といっても絵のかわいさ。乳児期特有のかわいらしいしぐさや行動の描写、日々の成長やきらめきがていねいに描かれている。これらは気が付くと消えていってしまう(見られなくなってしまう)ものでよくぞここまで記録している…と感心した。

 自分はと言えば毎日バタバタしていて、ぼんやりとしか覚えていないことに気付き愕然とする…。プレから今まさに0歳児を育てているママパパな皆さん、記録は大事です、と改めて言っておく。

 そしてもう一つの魅力は、多くの共感を集めた倉田さんの分析力である。単純な「子育てあるある」ではなく、一つ一つの事象を細かく観察し、解説している。

 例えば産む前までは、「夫がミルクを飲ませたりして交代で育児から離れ、おでかけの時間を作ろう」と倉田さんは思っていた。しかし全く楽しめない。

 なぜなら産後のおっぱいは授乳後3、4時間で張ってくる。何をしていても次の授乳時間や、搾乳しないと…などとおっぱいに関することが頭をめぐる。またアカチャンの生活サイクルは授乳→ねんねの繰り返し。普段母親のおっぱいで寝かしつけている場合、ミルクに置き換えると、流れが異なるためうまくいかないこともある…という分析である。

 またアカチャンの服のスナップボタンが多いことに気付いた倉田さんは「人生でこんなにスナップを開け閉めすることはない」と数えてみた。すると半年で15,000回以上、時間にして8時間を費やしていたことに気付くのだ。とはいえ便利、(スナップとは)ズッ友(ずっと友達)だよ、と締めてクスリとさせられる。

「あるある」に分析と解説をプラスすることにより、育児中の方、これから赤ちゃんを迎えるプレママ&パパ、そしてお子さんがいない方も楽しめる内容になっている。他にも「おっぱいの遊び飲みいろいろ」と6種類の遊び飲みを紹介。5種類のねぐせを描いた「寝ぐせギャラリー」など、それぞれに観察と、分析が加えられている。もちろんとびきりかわいい絵で。

しぐさや行動はもはやイベント! 一瞬たりとも見逃せない!

 アカチャンの爆速の成長は、以下のような流れで描かれる(※あくまで倉田さんの息子さんの場合で、できることの時期には個人差はある)。

●生後0~2か月
 モロー反射(急に体がビクッとなる)、指吸い、手上げを始める時期。母は授乳に苦労しつつも息子くんの肌やにおいを堪能する日々。

●生後3~5か月
 言葉のようなものを叫ぶ、自分の体を認識する、離乳食開始、寝ながらの足上げ、寝返りの始まり、など。

 そして何といってもホンイキの笑顔を見せてくれるようになる。この時期は子育ての苦労が報われた気になる、親にとって最初のピークだと思う。

●生後6~8か月
 寝返りが徐々に上達。歯が生える。掴み食べするようになる。ずりばいで移動を開始。おすわりも自力でできるように。

●生後9~11か月
 しっかりしたハイハイができるようになる。モノを何かの上に置いてみるなどの行動。手をパチパチとする行為ができるようになり喜ぶ。つかまり立ちも。

 本稿のライターのような「子育てが懐かしい組」には、こんなだったか…と、しみじみしてしまうこの365日。なお本作には「すくすくアカチャン成長シール」が付属。「はじめてニッコリ」「はじめてのつかまり立ち」などのイラストが描かれており、手帳などに貼れば記念日のようにこれらを記録できるスグレモノだ。

SNSからのファンも楽しめる0歳児の満喫記録!

 0歳児のあるある分析だけではなく、作中では育児グッズを使用し、そのようすをレポートのように描いている。モロー反射を防ぐスワドルミー、スリーパー、レッグウォーマーなどの紹介は、育児のお役立ち情報となっている。

 また本作は単なる書籍化ではなく、前述のおまけシールに加えて「1歳まで成長しての感想」など40ページもの描き下ろしを収録。さらにカバーをとった下の表紙にイラストが描いてあり、新規要素が満載で、SNSで読んでいた方も改めて楽しめる。

 倉田さんは0歳児との生活を「めちゃめちゃ長距離のジェットコースターに乗っているよう」とたとえた。そのうえで0歳児を存分に“満喫”したようだ。

 子供の人生の始まり、その最初の1年は、本人にとっても親にとっても大切なものだったと、今更ながら強く感じた。すでに「アカチャン」を「ニンゲン」に育てあげた方、いま大変な思いをして子育てを始めたばかりの方に、ぜひ読んでもらいたい一冊だ。

 なお「いつだって一番大きくて小さい存在の愛で方」(p.122)というエピソードは、個人的にめちゃめちゃ共感した! と最後に書いておきたい。

文=古林恭