殺し屋一家の少年と超能力を持つ社長令嬢によるダークラブコメ『月島くんの殺し方』。とんでもない波乱が起きてしまうのか…?

マンガ

公開日:2020/11/22

月島くんの殺し方
『月島くんの殺し方』(藤原ヒロ/白泉社)

 テレビアニメ化もされた『会長はメイド様!』の藤原ヒロさんが、『ユキは地獄に堕ちるのか』以来4年ぶりに発表した新作長編マンガ『月島くんの殺し方』(すべて白泉社)。ざっくりくくれば、学園ラブコメ→ダークファンタジーと作風に大きなふり幅を見せた前2作。今度はどんな新しい一面を見せてもらえるのだろう? とわくわくしながら読みはじめた最新作は、いうなれば学園ダークラブコメ。心に虚無をもつ殺し屋少年と、彼に殺されるのを待ちわびる超能力少女の、不可思議な恋模様(?)を描きだす。

(?)と書いたのはいまのところ少女のほう――依茉・ハワードに恋心はないからだ。人に触れるだけでその心の内を読みとれる依茉の力を利用して、不動産会社を経営する父親はアメリカで確固たる地位を築いた。日本にやってきたのは、裏社会で名を轟かせる暗殺一家・月島家の跡取りである蓮を手に入れるため。そのために月島家が創業者である高校に依茉を転校させ、クラスメイトとして近づかせるのだが、まず依茉の生い立ちがなかなかにきつい。父親から一切の愛情を与えられずに生きてきた、どころか、父親の言うことをきかなければ生きていけないくらい抑圧された日々を送ってきたのだ。

 唯一、愛情を注いでくれた亡き母親の「最期には『幸せだった』と思える人生にしてね」という言葉だけが彼女の生きる糧。というよりは、死ねない理由。1日もはやく母親のもとへ行きたいのに、幸せどころかなにひとつ人生に希望のもてない彼女は、母親の願いにそむいて、いま死ぬわけにはいかない。そんなとき、知ってしまうのだ。蓮が、家業を継ぐ試練として依茉を殺そうとしていることを。

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 喜んで命を差し出したい依茉だけれど、この蓮という少年がなかなか厄介。なんと初対面で依茉に一目惚れした彼は、「自分の手で殺さなきゃいけない――誰にも殺させたくないからこそ、依茉の命を狙うものはすべて撃退し、自分の全てを懸けて依茉を幸せにしなくてはならない」とかたく心に誓うのである。いつ殺してくれるのだろうとそわそわしている依茉には、その感覚がいまいち理解できない。全力で依茉を楽しませようとする蓮に「こんなに楽しいのは初めてだから今! ほらこの瞬間にさくっとやっちゃって!」と期待が募るほどに表情が輝き、蓮がますますメロメロになっていくという悪(?)循環。

 予想としては、蓮の心に潜む深くて昏い虚無に触れた依茉が、その事情を知るうちに、そしてともに“幸せ”な時間を過ごすうちに惹かれていき、ともに親の鎖から抜け出していくのでは……と思うのだけど、2人の凄惨な生い立ちとそれゆえにこじれた性格をみるに、そう簡単にはいかなそう。そして、父親のせいで誘拐されたり、それなりに狙われたりすることはあれど、命まで狙われることのなかったはずの依茉に放たれる数々の刺客。新キャラの登場をにおわせて閉じた1巻、波乱はまだまだこれからの模様……。久しぶりの新作、焦らずじっくり、できるだけ長く楽しんでいきたい。

文=立花もも

この記事で紹介した書籍ほか

月島くんの殺し方 1 (花とゆめCOMICS)

著:
出版社:
白泉社
発売日:
ISBN:
9784592220718