40歳でGAFAの部長に転職。エリート会社員は20代で何を学んだ?

ビジネス

公開日:2021/1/19

40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法
『40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法』(寺澤伸洋/KADOKAWA)

 言われたことをやるだけでなく、自分で考えて行動しろ――20代の若手社員なら、耳にタコができるほど言われる言葉だ。これは当たり前のようで、実行するのはむずかしい。特に、自ら課題を発見して解決できるレベルとなると、周りを見渡してもできる人は限られているだろう。若手のうちから動ける人材は、普通の会社員とは何が違うのか。

 本書『40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法』(寺澤伸洋/KADOKAWA)にそのヒントがある。「GAFA(ガーファ)」といえば米国の4つの主要IT企業、「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」の頭文字を並べた呼称で、どれも高給と実力主義で知られる。40歳でその部長に転職したというから、会社員としては理想的なキャリアを歩んでいると言えるだろう。そんな著者は、20代のときに何を考え、何を学んでいたのか。当時の上司であるNさんに学んだという思考法を、たとえ話を交えてわかりやすく解説していく。

■「美味しいカレーの作り方」を要素分解する

 目の前の課題があるとき、まず行うのが「要素分解」だ。著者は、「美味しいカレーの作り方」を想像してほしいという。「なぜいきなりカレーの話に……?」と思うかもしれないが、「要素分解」の例にはうってつけだ。「美味しいカレー」を作るとき、考えるべきことはいろいろある。誰に振る舞うのか、どんな材料が必要なのか、食べるときにふさわしい場所、雰囲気は……。ターゲットや材料などの要素に分解して初めて、目指すべき「美味しいカレー」が具体的に想像できるようになる。

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 実際の仕事も同じだ。たとえば、あるエリアの販売戦略を考えるとき。要素分解をすれば、考えるべきポイントが絞れる。「○○をたくさん売ればいいんじゃないか?」と個別の戦術を深く考える前に、商品の種類や、売り方、販売経路など、戦略を構成する要素を洗い出そう。全体を俯瞰することで、真のポイントが見えてくる。

■頭の回転が速い上司の話はなぜ腹落ちしないのか?

 上司の指示が腹落ちせず、“やらされ仕事”になってしまうことがある。しかも、よく背景を聞けば納得できるのに、上司が言葉足らずのため反感を抱いてしまう場合もある。著者は、こうしたケースの原因は、上司の「論理の飛躍」と「思い込みによる決めつけ」にあると語る。頭の回転が速い上司は、議論のスタートと結論しか言わず、中間の論理をすっ飛ばしてしまうことがある。また、すぐに結論に飛びつき「○○の原因は××だ」と決めつけてしまうこともある。

 前者は、思考の過程をきちんと話せば、聞き手に納得感を持ってもらえる。後者は、思いつきで決めつけずに、逆からも検討することが大事だ。たとえば、「○○の原因は××だ」と思ったのなら、○○の原因になり得るものは、本当に××だけなのかを抜け漏れなく考えたい。いくつか考えられる候補のうち、根拠をもって××だと言えるのが理想である。

 この考え方は、マネジャーだけでなく、後輩や他部署などに仕事を頼むときにも応用できそうだ。ただ仕事をお願いする(≒結論だけ話す)のではなく、その背景や思考の過程も話してみよう。そうすれば、相手も仕事に納得感が生まれ、その後の議論も有意義なものになる。

 GAFAというイマドキな言葉がタイトルに入った本書だが、その内容は普遍的なロジカルシンキングや仕事の進め方についてである。本稿で紹介した話以外にも、目的を見失わない会議の進行や、新しいプロジェクトで決めるべきことなど、20代で身に着けておきたいビジネススキルが満載。将来のキャリアアップを目指すなら、小手先のテクニックよりも、根本的な仕事の思考回路を身に着けたい。

文=中川凌(@ryo_nakagawa_7