人の顔を認識できない少女が目撃した放火事件の怪しい関係者…衝撃の真相に二度読み衝動が抑えられないミステリー

文芸・カルチャー

公開日:2021/1/22

彼女は僕の「顔」を知らない。
『彼女は僕の「顔」を知らない。』(古宮九時/メディアワークス文庫/KADOKAWA)

『このライトノベルがすごい!2020』単行本・ノベルズ部門第1位に選ばれた『Unnamed Memory』で知られる古宮九時氏の最新作が刊行された。その名も、『彼女は僕の「顔」を知らない。』(メディアワークス文庫/KADOKAWA)。『Unnamed Memory』は、呪われた王と最強魔女のファンタジーノベルだったが、最新作は、現代の高校生を描いた青春ライトミステリーだ。人の顔を認識できない少女と、そんな彼女の支えになることを誓う少年。2人のもどかしい距離感と、次第に明らかになっていく未解決放火殺人事件。恋愛要素あり、ミステリー要素あり、思いがけない大どんでん返しありの、1冊で何度も楽しめるこの作品は、前作同様、大きな話題を呼びそうだ。

 主人公は新塚良。彼は小学生の時、キャンプ場での放火事件に巻き込まれ、両親を喪った。それから10年がたったある日、高校生となった良のクラスに、良と同じくあの放火事件で両親を喪った葛城静葉が転校してくる。事件当日に怪しげな男と遭遇したという静葉。だが、彼女は“失貌症”――人の顔が認識できない病を抱えていた。

advertisement

 人の顔が認識できない静葉の生活には苦労が絶えない。何度会ったとしても人の顔が覚えられないし、表情を読み取ることもできない。だから、他人とコミュニケーションをとることにずっと苦戦してきたのだという。だが、良とは事件の日に会って以来なのに、まるでずっと友達関係を続けてきたかのように話すことができた。また、良にとっても静葉は特別な存在だ。周囲の人の負の感情に強く影響を受けてしまう良だが、不思議と静葉の感情を読み取ることはできない。だからこそ、静葉となら自然に接することができる。2人は関わりあっていくなかで、次第に、互いをかけがえのない存在として認識し始めていく。

「私は犯人を知りたいんです。私に与えられた時間はもうきっと長くないから」。

 静葉は、放火事件の犯人を突き止めたいと言い、良にその協力を求めることになる。静葉同様、良だって10年前のことを忘れたことはない。燃えるコテージから静葉とともに一緒に逃げたことも、燃え上がる炎を見つめて絶望する彼女の感情に寄り添うのではなく、彼女の美しさに見とれてしまったことも、今でも罪悪感とともに思い出す。だが、どうして、10年がたった今、静葉は事件について調べ始めたのか。静葉の元に届く差出人不明の脅迫状、周囲をうろつく黒服の男、不審火の記録…。とある秘密が明らかになるにつれ、読者は強い衝撃を受けるに違いない。

 10年を経て、再び事件が動き始める。良と静葉は、事件の真相にたどり着くことができるのか。どうして良はこんなにも静葉に尽くそうとするのか。青春×恋愛×ミステリーがかけあわさったこの作品は、思いも寄らない展開が続いていく。ページをめくる手をやめることができないだけでなく、二度読み必至。真相を知った上でもう一度読み返したくなる衝撃の青春ライトミステリーをあなたもぜひ体験してみてほしい。

文=アサトーミナミ

あわせて読みたい

『彼女は僕の「顔」を知らない。』作品ページ

この記事で紹介した書籍ほか