いつも同じ向きでうんちをするのはどうして? 愛犬の本音が分かる『いぬほん』

暮らし

公開日:2021/2/6

いぬほん 犬のほんねがわかる本
『いぬほん 犬のほんねがわかる本』(道雪葵:マンガ、今泉忠明:監修/西東社)

 3匹の愛猫と暮らし、5年間も猫の記事を執筆し続けている筆者は自他ともに認める猫好き。何気ない動作から猫の気持ちを汲み取れるようにもなった。しかし、その一方、謎が多い動物だと常々感じているのが、犬。犬と猫はもとを辿れば、ミアキスという同じ祖先に行きつくのに、両者には違いが多い。

 犬は普段、何を考えているんだろう…。そう思っていた時、目にとまったのが『いぬほん 犬のほんねがわかる本』(西東社)。本作は『うちのトイプーがアイドルすぎる。』(KADOKAWA)の作者・道雪葵さんと人気動物学者の今泉忠明さんがタッグを組んだ、ワンダフルな1冊。最先端の研究に基づき、犬の心理を100問100答形式で解説している。

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いつも同じ向きでうんちをするのには驚きの理由が!

 行きつけの美容院で犬と触れ合うたび、アクティブな姿に驚く。ソファーで眠って1日を謳歌する愛猫との違いを愛くるしく思う。だが、無邪気に見える行動の裏には、意外な本音が隠されているようだ。

 例えば、いつも同じ向きで排泄をすることが多いのは、南北の地軸に体を合わせているから。そして、排便前にくるくると回るのはコンパスのように地軸を探し当てるためだと言われているよう。

いぬほん 犬のほんねがわかる本 p.18-19

 なぜ地軸に沿って排泄をするのかはまだ謎のままだが、犬は視覚的な手掛かりがなくても隠された磁石を発見できることが分かっているため、鳥や昆虫のように地球の磁場を感知しているのではないかと考えられている。

 衝撃を受ける本音は、他にもあった。そのひとつが、私たちが「降参」のサインだと思いやすい仰向けポーズの意味。実はお腹を見せる仕草には「甘える」「防御」「反撃」といった意味もあり、「服従」はそのうちのひとつにすぎない。実際、カナダの大学が犬同士の腹見せ行動248例を分析したところ、服従の意味を持つものはなんと1例もなかったという。

 ちなみに余談だが、猫がお腹を上に向けるのにも反撃の意味がある。胸キュンポーズを披露し、反撃の隙をうかがう犬と猫…。どちらもなんてあざとくて、かわいいんだろう。

「かわいさ」の裏に隠された高い知性

 全身を使って甘えてきたり、遊ぼうと誘ってきたり、犬の全力で豊かな感情表現にはキュンとさせられることが多い。だが、そのかわいさの裏には意外な知性が。なんと、犬は自分の要望を人間に伝えるために、少なくとも19種類もの仕草を使いこなしているという。しかも、飼い主がすぐに要望を汲み取れない場合は何度も同じ仕草をくり返し、意思を伝えるのだ。もしかしたら犬は、諦めないことの大切さを私たちに教えているのかもしれない。

いぬほん 犬のほんねがわかる本 p.58-59

 また、筆者が一番驚いたのは、犬がオオカミにはほとんどない目の上の筋肉を発達させ、困り顔を作れるようになったという事実。さらに、こうした困り顔は人間が見ている時、頻繁に見せることが実験で分かっているという。人間の心に刺さる表情を理解する知性の高さ…。思わず、拍手を送りたくなる。

 なお、2017年にイギリスの大学で発表された実験では、人間が背を向けている時よりも、見ている時のほうが犬はかわいい仕草をたくさん見せ、犬は人間の視線を意識して行動していることが明らかとなった。

 こうした特性は単に「あざとかわいいもの」ではなく、長きにわたり人間のパートナーであり続けてきたからこそ、身についたものだと思う。お互い、はじめは生き残るために共に生きていく道を選んだが、人間にとって犬がペットではなく家族という存在になっていくのに伴い、犬も心境が変化して、より楽しく人間と生きていきたいと願うようになったのではないだろうか。かわいさの裏にある高い知性は、人間と生き続ける道を選んだ犬たちの努力の証だ。

 この先、人と犬はより密接な関係になっていくだろう。例えば、犬の優れた嗅覚で人間の病気を発見しようという試みがなされていたり、アメリカやカナダでは犬に本を読み聞かせるという新しい学習法も広まってきたりしている。

 そうした中で私たちが忘れてはいけないのは、動物はパートナーだという認識。時代や人間の生活スタイルの変化に適応し、共に生きようとしてくれている動物たちに感謝して、私たちのほうからも歩み寄っていきたい。心から人を愛してくれている犬たちに人間ができる愛のお返し法は、まだまだたくさんあるはずだ。

文=古川諭香