壁ドンも顎クイも派手なデートもしないけど…。地味で目立たない“脇役”だからこその「もだキュンラブ」にドキドキが止まらない!

マンガ

公開日:2021/3/9

スイートバニラビーンズ
『スイートバニラビーンズ』(八神星子/白泉社)

 少女マンガや恋愛ドラマで、「主役」たちの恋に憧れを抱いたことはありませんか? 彼らは意図せずとも、話題の中心におり、快活で華やかです。もちろんそれなりに挫折や葛藤も経験するものの、それですら主役をより魅力的に輝かせる要素となってしまう…!

 取り立てて問題を起こすこともなく、かといって、皆から名前を覚えてもらえるわけでもない「脇役」として淡々と過ごしてきた私は、主役の恋がまぶしくて仕方がありません。

 八神星子先生のマンガ『スイートバニラビーンズ』(白泉社)のヒロインは、成績優秀で明るく美人な生徒会長…の「友達」、ヒーローは、カリスマ性のある大胆不敵でお金持ちのイケメン…の「友達」、そう、普段なら決して目立たない主役の「親友側」にスポットライトをあてたほんわかラブコメです。本作は「壁ドン」「顎クイ」「おもしれー女」などの少女マンガ的な必殺技は一切出てきませんが、地味な2人がもだもだしながら恋をする様子は、とってもユニークで可愛くて、ときめき満載でした!

advertisement

地味な脇役だからこその“繊細な恋”に共感&胸キュンの嵐…!

 本作の主人公・中谷ことりは、とある公立高校に通う顔も成績も普通の女子。ことりは、生徒会の副会長をしており、隣の金持ち私立・富豪高校との合同文化祭の会議で、同じく生徒会の副会長をする地味な男子・浜中優(すぐる)に出会い、恋に落ちます。ことりの親友で、生徒会長のちとせと、優の親友で、同じく生徒会長の奏の恋も同時に描かれるのですが、彼らの恋は、後夜祭で公開告白、デートは毎週海外、壁ドンに顎クイとスピード感があり、超ド派手!

 対して、ことりと優は、そんな彼らを、裏側からこまやかな配慮でしっかりと支え、文化祭を成功へと導くのですが、2人の活躍は、他の人の目になかなか留まりません。ですが、そんな2人だからこそ、お互いの頑張りや魅力的な部分にいち早く気づき、想いを素直に伝え合います。「あなた『で』いい」ではなく、「あなた『が』いい」――。そうハッキリと伝えられる告白も、周囲をよく観察している2人ならでは。説得力があり、キュンとしました。

友人同士の強い絆がうらやましい!

 地味なことりと優は、カリスマ性抜群の親友・ちとせと奏に、とても信頼されています。優だけは、お金持ちの親友・奏のことを、家柄関係なく冷酷な目で叱りつけます(笑)。ことりは、貧乏で厳しい環境で育つちとせの苦労をそっと慮り、こまやかな心配りを忘れません。また、逆に地味な2人も、結果や保身を考えずに心のままに動く親友たちから影響を受け、恋を加速させていきます! 良い影響を与え合う友人同士の堅い絆も本作の見どころです。

脇役でも恋は「トクベツ」。甘~い恋と熱いキスにドキドキ!

「私たちはたとえるならバニラビーンズ」。ことりは、地味で全然目立たない自分と優のことを、お菓子作りの際に、甘いバニラの香りをつける食材にたとえてこう表現します。ですが、彼らの恋だって、主役に負けないくらい甘~い香りを放っているのです。恋人に喜んでほしくて、デートのプランを練ったり、手を繋ぐタイミングに悩んだり、くっつきたくても言いだせなかったり…。手探りで失敗して、悩みながらも、「大好き」という気持ちをいつだって素直に伝え合い、熱くて甘いキスをする瞬間は、紛れもなく“2人だけのトクベツなもの”で、私もこんな恋をしてみたい! と、憧れすら抱きました。

 ミスコンで優勝したり、キレイ・かっこいいとちやほやされたり、クルーズ船を貸しきってデートしたりすることはない普通の恋だけど、そんな主役にならない2人だからこその優しさやトクベツもたくさんあり、心を射抜かれた一冊です。

文=さゆ